第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
"ドンドンドンドンッ"
思わず俺も綾ちゃんも、
動きが止まって目を合わせる。
『…誰だろ?』
『さぁ…知らんふりでいいよ。』
だけど、
"ドンドンドンドンッ"
さっきよりさらに大きな音。
そして、
『オーイーカーワー、いるんだろっ?
相棒の、参上だぜっ!!』
…木兎。
なんで、こんな時に、こんなとこに…
『…綾ちゃん、ここにいて。
気分悪いって言って帰すから。』
『…いいの?』
『いい。今、全っ然、会いたくない。』
綾ちゃんにシーツをそっとかけて
俺だけベッドから起き上がる。
ドアは開けずに、中から返事だけ。
『コタローちゃん、悪いけどさ、
今、会いたくない。気分、悪いんだ。』
『なぁに言ってんだよ、
せっかく相棒が参上したんだぜ、
とりあえず、顔、見せろよっ。』
『…やだ。帰ってくんないかな?
てか、なんでここにいんのさ?』
『なんで、って。
だって今夜、俺らもここに泊まりだし。』
…忘れてた。
今夜はJAPANもここに泊まるんだった。
少し前まで木兎も強化組だったから、
マネージャーともメンバーとも顔見知り。
俺の部屋番号を知ることなんて、
そりゃ、簡単なことだ。
それにしても、"相棒の参上"だなんて。
言葉がいちいち、ムカつく。
俺の不調を心配して来たとでも?
他人の心配出来るなんて、
さすが、上の人間は、余裕だね。
俺だったら、調子悪いヤツがいたら
"ラッキー"って思うよ。
…特に、トビオとか宮とかさ。
『ここでは俺ら、相棒じゃないじゃん。
コタローちゃんが俺に何の用?』
『いやいや、俺は、特に用はねーんだけど。』
『はぁっ?』
…綾ちゃんにも
奇妙なやりとりが聞こえてたのか、
ベッドから降りて
こっちに近づいてくるから、
"大丈夫。そこにいて。"
そーっと口だけ動かして伝える。
まるで子供の遊び…
あれなんだっけ?
"だるまさんが転んだ"?!…みたいに
部屋の真ん中で
動きごとフリーズする綾ちゃんと
ドアに顔をくっつけてる俺。
…もう。
いい場面だったのに、
なんでこんなマヌケなシーンに
なっちゃってんのさっ!!
『…用がないなら明日でいいよねっ?!』
ドアの向こうに
言葉を吐き捨てた次の瞬間、
フリーズしたのは、俺だった。