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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)



もし
綾ちゃんが来てくれるという
希望がなかったら、
俺、どうしただろう。

綾ちゃんが来るとわかっていたから
シャワーも浴びたし、荷物も片付けた。

…感情は、まったく動かない。
テレビをつける気もしないし、
スマホを触るのもおっくうだ。

何を話したい、とかも浮かばないけど、
とにかく一人になりたくなくて、
俺はまだダメじゃないよね?って
誰かに確認したくって、

そんな弱音を吐ける人は、

"トントン…"

来た。
あれからきっかり1時間。
俺の全部を、受け止めてくれる人。

細くドアをあけて
その姿を確認すると

ぐぃ、と腕をつかんで、
部屋に引っ張りこむ。

『お待たせ。』

『待ってた。』

変に気を遣わない
いつもの柔らかい笑顔が
たまらなく、沁みる。

『…綾ちゃん…』

部屋の入り口に立ったまま、
ギューッとキツく抱き締める。

綾ちゃんも
俺の背中に腕を回して
ふんわりと抱き締め返してくれる。

『…及川君、いい匂い。
あたし、汗かいててごめんね。』

スンスン、と、その体の匂いをかぐ。

ほんのり、香水の残り香の向こうに、
…あぁ、人混みと、体育館の匂い。
きっと、
試合が始まる前から来てたんだな。

『…最初から、見てたんだね。』

『うん。
折角だから、ちゃんと見ようと思って。』

『…なのに、俺、超 ダサかったね。』

『…』

そんなことなかったよ、とも
いやいやカッコよかったよ、とも
そうだね、ホント、ダサかったね、とも
言えるはずない、とわかってるのに

こんなこと言ってしまう、
俺の弱さと甘さ。

『…及川君、でも、私、』

無理して誉めなくていいよ。
誉めるポイント、何もないだろ。
何も言わせたくなくて
…綾ちゃんを困らせたくなくて、

『…っんんっ…』

唇をふさぐ。

グイグイと唇を噛むように貪り、
1度離れて、
そのままベッドに引きずり倒した。

『…そばに、いてよ。』

『…うん。私が辛いとき、
いつも及川君、いてくれたから。
今日は、私がそばにいる。』

…試験に不合格だった時。
木兎と別れた時。
確かに、
綾ちゃんのそばにいたのは俺だった。

俺達はお互い、
"辛いときそばにいてくれる人"。

…手荒な仕草で
シャツをめくろうとしたその時。

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