第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
JAPANのサーブで始まる試合。
ネットを挟んだ向こうに、
俺がブッ潰したいヤツNo.1の顔…牛若と
俺がどうしても追い付けない相棒…木兎が
並んでる。
スケスケの、
ピラピラの、
ゆらゆらの、
ネット1枚で隔てられた
ヤツラと俺の世界の差。
キレイに返ってきたレシーブで、
ぶち破ってやりたい。
コイツらのド真ん中を。
そんな気持ちが、
頭を経由せず直接、指先に出る。
牛若と木兎の
真正面へのトス。
…どシャットで止められた。
…当たり前だ。
実力で言えばあっちの方が上。
真正面からぶつかったら、止められる。
大きく湧く体育館。
それは、木兎と牛若への歓声。
クソ、という言葉を飲み込む。
『ごっめーん。正直すぎたっ!』
チームメイトには
テヘ、と笑ってみせて、
ネットの向こうには
チ、と舌打ちしてガンを飛ばす。
次のサーブは強烈で、
ダイレクトで返ったボールは
こっちの守りの体制が整わないうちに
軽々と打ち込まれ、2-0。
『今のはしょーがない、
次、次。切り替えてこっ!』
自分に言い聞かせるように声を出す。
次のサーブも強烈。
リベロがようやく拾ったボールが
コートの外に飛んで、
…いける。届く。
取材エリアギリギリまで追いかけていき
レフトに超 ロングトスをあげる。
…あの、烏野との試合の時のように。
でも。
岩ちゃんみたいに"阿吽の呼吸"では
感じ取ってもらえなくて。
スパイカーは
なんとかあわせて飛び付いたけど、
パワーのあるスパイクを打つ余裕はなく、
これもきっちり、止められる。
俺のファインプレーより
むこうの簡単なブロックが決まる方が
歓声が大きくて。
…なんだ、コレ。
ギリギリ、と、頭のなかで
音がしている気がする。
次のサーブはきっちり返る。
最善の、トス。
スパイクは
相手のブロックに吸い込まれ、
ホッとした瞬間に、また歓声。
…繋がってる。
あっ、と思った一瞬のスキをついて、
牛若の左手から炸裂したスパイクが
こっちコートに突き刺さる。
歓声。…向こうへの。
つい、言葉が、飛び出した。
『みんな、ちゃんと集中してるっ?!』
…コートの中に、
緊張が伝わったのがわかる。
ネットの向こうから、木兎の声。
『オイカワ、落ち着けよ。』
敵に…相棒に心配されて。
顔なんか、見れるわけない。