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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)




久しぶりに、
この規模の観客の前で試合する。

大学の大きな大会には何度も出たけど
これほど一般客が多いことはなかったし

JAPANのメンバーとの練習試合は
いつも非公開だった。

大好きだったはずの大舞台、大歓声。
それが、
"俺のものではない"と感じたのは
…初めて、かもしれない。

アップでコートに立った時に
観客席をぐるりと見渡してみたけど、
灯りが眩しくて、
それに、人の数が多過ぎて、
当然、綾ちゃんの姿を
見つけることは、出来なかった。

足元が、ふわふわする。
指先が、硬い気がする。
スタンドの歓声が気になって
仲間の声が聞こえない。

多分、これは、
"緊張"というヤツだ。

今まで何度も、後輩たちが
"急に出ろって言われると、
緊張して、体が思うように動かない"と
言っているのを聞いて、

俺はその度に

"後悔しないほど練習してきてるなら
緊張なんか、する暇ないはずだよ。
やってきたことを発揮できる、って
俺なんか、いつもワクワクだけどね。"

…と言ってきた。

その言葉が、今、
自分に直接、突き刺さる。

この2ヶ月の俺。
練習以外に気持ちを奪われてた時間…
バレーのことよりもっと考えてた事…
後悔する暇がないほど練習したか?

…どんなに"違う"と言い訳しても
本当の事は、自分が一番よく知ってる。

強化組のセッターは、
俺の他に、トビオも宮もいる。

…高校時代の彼女と別れてきたらしい、
ストイックなトビオ。

独特のメンタルで自分を貫き通す、宮。

後輩とはいえ、実力に差はないことは
俺も認めざるを得ない強者たちで、
ちなみに、
今日もヤツラは絶好調に見える。

コートのむこうもこっちも、
みんな、敵。

…ヤバイ。
ヤバイ。
息が苦しい…

『……川、及川?おい、聞いてるか?』

『…ぁ、はい。』

『顔色、悪いぞ?スタメン、大丈夫か?』

『当たり前ですっ。行きますよっ。』

コーチに言い返す俺。

『及川さん、代わりましょか?』

ニヤリと声をかけてくる宮。
その宮をジロリと黙って睨むトビオ。

『あいにくだけど、心配無用だからっ。』

心配なんかいらない。
むしろ、お前ら、邪魔。

イライラが治まらない。

…コートの中に立ってはいるものの、
平常心にはほど遠い状態で

試合開始のホイッスルがなった。



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