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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)




そしてその日はやってきた。

1週間の合宿の最終日。
昼間の練習のあと、
宿泊しているホテルで飯を食い、
夕方からの試合会場へ移動するバスを
ロビーで待っていた。

ホテルの外に
ファンが集まってきてる。

みんな暑いのに熱心だなぁ、
サインくらいしてあげたいな、
…なんて思いながら
その姿を涼しいロビーから見てると

バスが、玄関前に到着した。

"キャーッ❤"

ファンの子たちの歓声が響き、
バスの周囲に人だかりが。

そのバスは、
俺達を迎えに来たのではなく、
JAPANのメンバーを運んできたバスで、

中から出てくる木兎たちにむかって
黄色い声が注がれる。

真っ赤なジャージの背中に
"JAPAN"の文字を背負った、

背の高い、
人気も実力も待遇も、
俺たちより上のグループ。

…手のひらが、思わず、
自分のカバンを強く握りしめる。

…初めてまざまざと見せつけられる、現実の差。
大学で木兎といる時には一度も感じたことのない
"ステージの違い"。

俺は今、明らかに"下のグループ"だ。

"育成組より強化組は上のグループ"
そう思っていた俺は、
明らかに基準値を設定し間違えていた。

"育成組より上"ではなく
"JAPANより下"。
これが、俺の、今いる場所。

猛烈な焦りと劣等感に
胸がムカムカする。

ぞろぞろと並んで歩く集団のなかから

『オイカワッ。』

…俺を呼ぶ声。今、一番、聴きたくない声。

『…コタローちゃん。』

『ここ、泊まってんの?俺らも今夜、ここ!』

『あ、そぅなんだ…』

ロビーに、呼び出しの声が響く。

『合宿組、バス来たぞ。全員、荷物もって移動!』

『じゃーな、オイカワッ。また後で!』

『ぅん。』

ギリギリの笑顔で答えて、外へ出る。
…さっき木兎達が乗ってきたのに比べて
2まわりは小さなバスが2台。

ファンの子達もほとんど、
ロビーの中の木兎達を見ていて、
俺達に振り向くのは、半分以下。

…いつの間に、こんなに差がついたんだろう。

俺、及川徹なのに。
いつだって人気も実力も一番で、
キャーキャー言われる担当だったのに。

…誰にも負けないと思っていたものは
簡単に俺の手からこぼれ落ちていって…

俺がこの世に存在する意味が、ない。
そんな、恐ろしい孤独を感じた。

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