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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)




その日ほど、
木兎に会うのに緊張したことはない。

…結局、綾ちゃんとはあれから
"とりあえず、これからも友達"という
なんとも中途半端な約束を交わして
それぞれ、家に帰った。

『せめて駅まででも送るよ』
という俺の申し出を、

『もう朝だし、一人でも大丈夫。』
と頑なに断った綾ちゃんの
本心は、わからない。

俺も一旦、家に帰って練習の準備をし、
すぐに部屋を出る。
…いつもより、少し早く。

木兎は、必ず、来る。
二日酔いかもしれないし
絶不調かもしれないけど、
必ず、来る。

そして、
練習を始めれば、
間違いなく、全力。

女と別れたくらいで
練習サボるようなヤツじゃないから、
木兎が木兎の輝きを放てるわけで。

だから俺も、
それに釣り合う平常心で
向かい合わないと。

どんな態度でこられても、
俺は俺の立場を間違えちゃいけない。

俺の立場。

木兎の相棒で、
綾ちゃんとは友達。
そして、俺自身は、
目標に向かう途中のアスリート。

どの立場でも不自然でない態度を。
…って、それがどんな態度のことなのか
さっぱりわからないから困るんだけど…

とにかく、
"普通"に木兎と接するために
ものすごく緊張しながら、
大学へ向かった。

静かな、体育館。
…まだ、来てないのかな?

靴箱に、靴が一足。

蛍光グリーンに
鮮やかなブルーのライン、
オレンジ色の靴ひも。

『どーんなに人が多い体育館でも、
これなら一目で見つけられるだろ!』
と、自慢していた、鮮やかな、
…派手な?(笑)色使い。

木兎のだ。

そっと入り口のドアを開ける。


いた。
一人で、直上パスをしている。

トンッ……トンッ……

静かな体育館に、
木兎の指先から生まれる
軽やかな音が、繰り返し響く。

…いつものあの
重量級のスパイクをぶちかますヤツと
同じとは思えない、軽やかで静かな音。

みんな、
表から見た顔とは違う一面があるんだよな、
…当たり前だけど。

ポスッ。

大きな手の中にボールが納まって。

『よっ、相棒。』

ニカッと笑った顔を見ると、
安心してしまう。

『おはよ、コタローちゃん。』

体育館の中に、二人。

避けては通れないひととき。
沈黙になるのが嫌で、
俺から話しかけた。

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