第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
"木兎みたいに
全力で強くいる自信がもてない。"
『あぁ、わかるわかる、その気持ち。』
『ホントに?わかる?及川君でも?』
『ものすごく、わかるよ。
こっちの気持ちが前向きな時なら
すっごく元気もらえるんだけど、
自分が弱ってる時だと、なんていうか
眩しすぎて、辛い。』
『…あたし今、最弱に弱ってるから、』
『今は、ちょっと特別すぎだよ(笑)』
綾ちゃんは、
裸の身体をキュッと小さく丸め、
俺に、くっついて、
フウッ、と深呼吸をした。
『及川君のそばは、落ち着くね。』
…素直に、喜んでいいのだろうか。
『…そう?』
『うん。
光太郎君のそばにいると、元気が出る。
進むぞ~っ、前進~っ、て感じ。
眩しくて天気のいい、休日、みたいな。
及川君のそばだと、
ひと休み、ため息ついてもいい、
…って感じ。
誰にも見られてない静かな夜。』
誰も見てないわけじゃなくて、
俺は、見てるんだけどね。
『…昨日、
綾ちゃんの太陽が沈んで、
やってきたのが夜、なのかぁ。』
『うん…』
綾ちゃんは、ポツリと。
『私の太陽、どっかいっちゃった。』
あまりに淋しい響きで。
はっきり"別れた"と言われるより
ずっと淋しい響きで。
『…そりゃ、急に前向きにはなれないよ。』
あんな眩しい太陽が消えたら。
『でも、頑張らなくちゃ。
あと半年、100%頑張る、って
光太郎君と約束したから。』
…しっかりした言葉なのに、
そこに力は全然、感じられなくて。
なんだろな、影、というか。
見えてるのに、つかめない。
動いているのに、表情がない。
眩しいと、影はくっきり濃い。
息苦しいくらい、はっきりと。
…だけどさ、闇の中なら、
影も自由になれるだろ?
言ってはいけない言葉だと
わかっているけれど。
別れた木兎の優しさを
逆手にとるのはズルいと
わかっているけれど。
『…俺が、いるから。』
『…ん?』
『いや、
つきあうとかそんな意味じゃなくてっ、
一緒に木兎に追い付こうよ、ってこと。
俺も絶対、VもJAPANも入るし。』
『…うん。』
『だからさ、これっきりじゃなくて、
たまにはお互いを励ましたりして、』
…励ます、って。
都合のいい言葉だ。
『息抜きとか、
弱音吐いたりとかも必要じゃん?』
だろ?