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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)



木兎と別れた今、
彼女と俺が会う理由もなくなる。

せっかくこうして
俺のことを見てくれたというのに。

いやだ。
手離したくない。

…この感情、ヤバくないか?

他の男に、
綾ちゃんを渡したくない。

今までセフレちゃん達に
"彼氏に内緒で俺と遊ぼう"なんて
平気で言ってたけど、
それが彼氏の立場にとって
どれだけ失礼だったことか。

今さらながらのこの感情。
"俺のそばに、いてほしい。"

これ、"独占欲"というのだろうか。

俺自身は"みんなの及川さん"で
よかったはずなのに。

…つい、
腕枕をしていた右手をぐっと曲げて
綾ちゃんの身体を抱き寄せた。

髪にもおでこにも頬にも唇にも、

あっちにも、こっちにも、
俺のシルシをつけたくて。

ゴロン。
腕の中で俺に近付いた勢いで、
ゆっくり、まぶたが開く。

『…ぁ…』

状況を確認するように、
ゆっくりと周りを見回す。
そして、俺の顔を確認して。

『…及川君…おはよう。』

そのたった一言で、
何もかもが終わったことを知る。

及川君、って、言った。
もう"トオル"じゃない。

…そうだよな。
あれは、特別。
あれは、勢い。
あれは、うわごと。

俺も、もとに戻らなきゃ。
"光太郎君の相棒の及川君"に。

思いきりさわやかな及川スマイルで。

『おはよ、綾ちゃん。』

ゆるい、眠そうな笑顔が
少しずつ、
はっきりとした表情になってきて、

そして、とても申し訳なさそうに。

『…ゆうべは、ごめんなさい。』

そうだよな。
どう考えたって、そう言うだろ。

『…ね、綾ちゃん、
それ、謝らないでほしいな。
むしろ、頼ってもらえて嬉しかったし。』

『…恥ずかしいことも、たくさん…』

『それも、嬉しかったよ、正直言って。』

『…及川君、優しいね。』

『綾ちゃんにだけ、ね。』

『女の子にはみんな、でしょ(笑)』

…やっぱり、そう思われてるんだよな。
身から出た錆とはいえ、堪えるよ…

苦笑いを返して、訊く。

『気分、どう?』

『光太郎君のこと?』

『うん。』

『…進まなきゃ、ね。
別れた意味を忘れないように。』

強い言葉の後に、
弱い、ため息が。

『光太郎君みたいに、
全力で強くいられる自信は、
今のところ、全然、ないけど。』

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