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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)



先にシャワーを浴びた綾ちゃんが
バスルームから出てきた。

じっくり見るのもなんだか照れる。

『俺も、ちょっと浴びてくるね。』

入れ違いに脱衣所に入ると、
畳んだ服が置いてあった。
その一番上に、そっと小さな光。

羽のネックレス。

…木兎と別れてしまったから、
もう、はめないのだろうか。
俺も一緒に選んだのに。

ズボンのポケットの中、
木兎からもらった
キーホルダーに手が触れる。

不思議と、心は穏やかで。

シャワーを浴びて
俺もバスローブを羽織り、
綾ちゃんのところへ。

…素っぴんの綾ちゃん。
日頃とほとんど変わらなくて、驚いた。
じっと顔を見てる俺に、
綾ちゃんが申し訳なさそうに言う。

『…やっぱり、素っぴんはあんまりかな?』

『いや、逆。差がなくてびっくりした。』

『光太郎君、お化粧あんまりしない方が
好きだったから…あ、ごめんなさ…』

木兎の名前を出したことにハッと気づいて
謝る綾ちゃん。
でも、俺の心は
さっきまでとは全く違っていた。

『いいよ。簡単に忘れられるわけない。
…二人とも、大好き同士だったんだから…
逃げても疲れるばっかりだしさ、
忘れたフリしたって、自分の気持ちに
ウソはつけないんだし。』

『及川君…』

『だけど、
今、抱いてるのは俺、ってことは
忘れちゃダメだからね。』

『…光太郎君、忘れなくていい?』

『だって、忘れられないだろ?
あんなスゲー男だよ?
…いっそ、額に入れて飾るくらい、
堂々と想い出に変えちゃえ。』

『そうできたら、嬉しいね。』

『そのかわり、』

綾ちゃんの頬を包む。
大事なものしか触りたくない、
俺の、大切な、両手で。

『世の中には、
コタローちゃん以外の男もいること、
忘れないで。…例えば、俺とか。』

『…贅沢な選択!
ファンの皆さん、ごめんなさい…』

本当に申し訳なさそうに
手のひらを合わせる姿がおかしくて
笑ってしまう。

…よかった。
さっき、あのまま抱かなくて、よかった。

俺と、木兎と、綾ちゃん。
それぞれがこの先
どうなるかなんて
誰にもわからない。

今夜のことも、
明日には過去になる。
だからとりあえず、
今は、気持ちに忠実に。

目の前の人に、
心と身体を預けよう。

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