第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
大学祭。
なんてHAPPYな言葉の響き♪
高く澄みきった秋空。
風にのってやってくる、
焼きそばやポテトの匂い。
そして…
小鳥のさえずりのように聞こえる、
女の子の笑い声。
今日は空気まで
ピンク色でキラッキラに見えるのは
気のせいか?
『…待ってた。俺がこの日を
どんだけ心から待ってたことか…フガッ』
『ちょ、コタローちゃん、鼻息!お下品!』
『だって及川…』
『うん、わかるよ、コタローちゃん、
女子大生は、こうじゃなくちゃね!』
『そーだっ!
女子大生は、ジャージじゃなくて
スカートはかねーと!』
正門から、
波のように押し寄せてくる女子大生達。
それはまさに、
釣り堀に放たれた、お魚ちゃんだ。
俺と木兎の釣り竿(笑)で、
何人、釣り上げられるだろうか?
今夜は、
生き造りに、踊り食いに、串刺し、
ワ☆メ酒、女☆盛りも?!
…女の子の、フルコース、かなっ?!
『ね、コタローちゃん…
毎日、大祭ならいいのにね…』
『それ、激しく同意…俺、今日、
過去最高、狙うからっ。』
『それって、』
『そうそう、連絡先交換、
プラスお持ち帰り記録も狙う!』
『それはいいけど、コタローちゃん、
腰、気を付けてよ?』
『及川だって。指、気を付けろよ?』
…なんの話だ(笑)
とにかく、
ここの大学祭に来る女の子はみんな
(…ってわけじゃないだろうけど)
将来、
日本を代表するアスリートの卵と
お知り合いになりたい…っていう
青田刈りのスカウトマンみたいな
気持ちのはず。
だから、ナンパの成功率は限りなく高く…
『コタローちゃん、あのグループだったら
どの子が好み?』
『俺?俺はあのショートパンツか
その隣のブルーのミニスカ。及川は?』
『俺は、後ろから2番目の髪の長い子か
白いレースのワンピ。』
ほらね。
木兎とは女の子の好みも正反対だから
それでモメることもない。
こんなところも、最高の相棒だ。
『よし、じゃあ及川隊員、そろそろ出発するか?』
『ウォームアップ、完了。
ではコタロー隊員、お互いの健闘を祈って…』
ガシッと拳を突き合わせ、いざ出陣。
二人並んで、
ゆらっと自然に
女子大生の波の中に混ざりこむ。
こちらからは、声をかけない。
話しかけやすいように、ゆっくりと。
いい人に見えるように、ニコヤカに。