第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
間もなく、最初の"アタリ"が。
『…あの、すみませーん。
この"第3体育館"ってところに
行きたいんですけど、どっちですか?』
『(全然チャラくない、爽やかな声で)
あぁ、第3体育館ですか、
分かりにくいところだから…
もしよかったら、案内しましょうか?』
『え?いいんですか?』
『もちろん。でも学内、広いから…
もし迷っちゃった時のために、
今のうちに、連絡先、交換しませんか?』
…はい、連絡先、5人、ゲット。
『すみませ~ん…あ、ほら、やっぱり、』
『(ノリノリの感じで)
ん?なぁに?俺達に、何か用?』
『バレーの木兎君と、及川王子ですよね?!』
『あれ、あれあれあれ?』
『なんで俺達のこと、知ってんのぉ?』
『だって、有名ですもん!』
『ん~、ここで出逢ったのは運命かな?
連絡先、交換しちゃう?!』
はい、連絡先、3人、ゲット。
こうして、
俺は、爽やか君にもチャラ男にも
変幻自在にキャラを使いこなし、
木兎は相変わらずの
ノリと軽さと明るさと楽しさで
過去最高数の女の子と連絡先を交換し、
過去最高数の女の子とエロエロし、
過去最高に満腹な夜を過ごした。
VIVA !! 大学祭 !!
VIVA !! Tokyo Life!!
そんなわけで、サイコーな東京暮らし。
バレーをやるための環境。
公私に渡る、新しい相棒。
数えきれない程の女の子。
これを充実と呼ばずしてなんと呼ぶ?
楽しむなら、今だろ?
青春するための大学生活だろ?
東京こそ、
俺が勝負する場所するべきだろ?
なんの問題も、あるわけない。
大丈夫、大丈夫、俺は、順調。
…と、自分に言い聞かせていた気がする。
とにかく、楽しい方を向いて。
気を緩めたら聞こえてきそうな
心の声には、耳を背けて。
『後ろから追いかけてくる才能が
すぐ近くまで来てるんじゃないか?』
『実力より人気が上回るようじゃ
見た目通りのチャラ男じゃないか?』
『…そんなに、
うまいことばかり、続くもんなのか?』
…本当は、わかってた。
俺はそんなにバカじゃない。
そう、
そんなにうまいことばかり、
続くわけ、ないんだ。