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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)



…どのくらい、話しただろう。
店員がラストオーダーの時間を
伝えに来たのをきっかけに、店を出た。

外に出て、感じる。

夜って、
こんなに暗くて
こんなに静かだったっけ?

店のなかのオレンジ色の灯りと
人の気配や音楽の賑やかさ。
気付かなかったけど、それがどれだけ
気分を押し上げてくれていたか。

いつも、そうだ。
なくなってみて初めて、
どれだけ大事だったかがわかる。

『帰る?…送るよ?』

綾ちゃんに聞いたけど
返事は、なかった。

ブラブラと、
俺の少し前を歩きながら、
空を見上げて明るい声で、

『光太郎君、今頃、どうしてるかな?
赤葦君や木葉君と騒いでるのかなぁ?』

『…』

『明日の朝、起きれるかな?
飲み過ぎた時、よく電話あってね、
"明日、7時にモーニングコールして!"
とかって頼まれたりしてたんだよ。』

『…』

『あれ、でも明日は土曜日か。
大学、休み?じゃ、オールかな?』

『…』

『あ、そっか。赤葦君達ついてるから、
あたし、心配しなくても大丈夫だね。
赤葦君、すごくしっかりしててね、
木葉君は、案外、お母さんみたいな…』

『綾ちゃん、』

後ろから、呼び掛ける。

『ん?』

立ち止まる。
でも、振り返らない。
だから、表情はわからないけど。

『…無理しないでいいって。』

きっと、

『大丈夫。私のための別れだもん。
私が泣いちゃ、ダメだよねー。
泣く暇あったら、頑張らなくちゃ!』

泣いてる。

『…大好き、だったんだろ?』

まだ、振り返らない。

『…うん。
ほんの何時間か前、ここ来る時は、
すっごーく、ウキウキしてて…』

右手がスカートを握りしめてるのが
後ろからでもわかる。
木兎が好きそうなデニムのミモレ丈に
健康的で、でも少し大人っぽい
白いタイトなノースリーブシャツ。

胸元にはきっと、あの羽のネックレス。

家を出る前に
木兎のことを考えながら
何度も鏡を覗きこんで
コーディネートしてきたはず。

『…俺しか見てないから。泣いていいよ。』

まだ、後ろ向き。
でも、空を見上げていた顔が
フッと、下を向く。

ほんの何メートルかの
俺と綾ちゃんの間の空気が
小さく、揺れた。

『な、頼む。…泣いて。』

それしか…思いきり泣かせることしか…
してあげられないから。

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