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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)




『俺、その最後の場面、
向かい側の店から見てたんだけど、』

『え?ほんと?』

…綾ちゃんが窓の外を覗く。

『あのカフェバー?』

『うん。赤葦君と木葉君と、3人で。
…別れ話してるって言われても、
全然、信じられなくてさ。
むしろ、
プロポーズじゃないか、ってくらい
二人とも笑顔だったよ。』

『ね。
大好きな人と別れた直後だって、
今でも信じられないもん。
…でももう、終わったんだ、ね…』

今日、初めて見る、寂しそうな顔。
そりゃ、そうだよな。
久しぶりの再会を楽しみに来たのに、
結果、別れ話で終わるとは、
想像もしていなかったはずで…

どんな言葉をかけていいか、
まったく、わからなくて。

…失恋、経験しとけばよかった。
こんな時、ほんと、
どうしていいか、わからない。

俺が無言になってしまったからか、
綾ちゃんが、明るい声を出す。

『あ!ね、もう一杯、頼んでいい?』

『いいよ、もちろん。』

綾ちゃんは、俺の分とふたつ、
ドリンクを頼んだ。
そして、テーブルに届いたグラスを
目の高さまであげると、ニコリと笑って。

『…私、いっつも
自分のことばっかり話しててごめんね。
まだ及川君のお祝い、してない。』

『?』

『強化チーム入り、おめでとう。』

あぁ、もう、

『ごめん、なんか、最悪のタイミング…』

『そんなことないよ!
それとこれとは全く別、だからね。
及川君こそ、
ここからがやっとスタートなんでしょ?
光太郎君と一緒に、JAPANチームで
私を待っててもらわなくちゃ。
それぞれ、頑張ろ。』

乾杯。

…ここに、木兎がいたらいいのに。

こんなシャレた店じゃなくていい。
いつもの居酒屋で、
だし巻き玉子とかポテトサラダとか
から揚げとかししゃもフライとか
そんな普通のもの、つつきあって、
3人でワイワイ言いながら乾杯できたら
素直に喜べたのに。

目の前で、
最近の出来事とかテレビの話題とか
そんな他愛ない話をしてる綾ちゃんに
無難な相づちを繰り返しながら、
頭では、違うことを考えていた。


…きっと、いなくなってからの方が、
木兎の存在の大きさの実感は、増す。


俺は、その空白を、
埋めてあげることが出来るのだろうか。


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