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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)



反論せずにはいられなかった。
まるで、
俺自身が別れを告げられてるようで。

『でも…だからって、別れなくても。
試験まで、たった半年くらいのもんだよ?
それまで我慢、でいいじゃん。
綾ちゃん、木兎のこと大好きなんだって、
アイツ、わかってないのかな?!』

俺の、怒りに近い反論に
静かに答えたのは、赤葦君。
木兎の心を代弁するように、
ハッキリと。

『…わかってるからですよ。
人生を変えるくらい大きな決断は
一番、失いたくないものと
引き換えにする位じゃないと、って。
1年に1度のチャンスまで
あと半年しかないから、
悩んでる暇はない、って。』

そんなこと。
そんなこと、

『コタローちゃん、そんなこと
考えるキャラじゃなくないっ?!
赤葦君達がそうやってコタローちゃんを
誘導したんじゃないのっ?!』

きっとそうだ。
木兎がそこまで考えるはず、ない。

欲しいもの、全部持ってて
いつも明るくて楽しくて、
失うことなんか考えずに
自分の感情に一直線な木兎が、
そんなこと、考えるもんか。

『俺達、むしろ、止めたんだけどさぁ。』

そう言った木葉君に続いた赤葦君の言葉。
木兎のことを言っているとは
到底、思えないかった。

『木兎さんは、失うことに、誰より敏感ですよ。』

嘘だろ。

『…何でも、持ってるじゃん。』

才能も。技術も。人気も。仲間も。

『才能はともかく、それ以外のものは
失うことの痛みと引き換えに
手にいれたものばかりですから。
それを手離さないための努力を
笑顔で、苦労と思わずに出来るのが
あの人の一番の才能なんです。
及川さんも、ご存じですよね?
木兎さんが、誰より練習すること。』

『それは、知ってるけど…』

…誰の話をしてるんだろう?
俺の知ってる木兎ではない気がする。

『じゃあなんで、別れる?
わざわざ自分から失いにいくような
ものじゃん?そこまでする意味、ある。』

『森島さんが目指してるのが
医者、だからでしょうね。』

『だな。』

…やっぱり、ふざけてる?

『いつかお医者さんごっこしたい、
なんて、俺、理由とは認めないよ?』

俺の言葉に、
二人は顔を見合わせて笑った。

『木兎、そんなこと、言ってた?』

『なきにしもあらず、ですね(笑)』

コイツら、バカか?
笑い事じゃないだろっ?!

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