第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
驚いたことに、(そして嬉しいことに)
木兎は、練習が大好きだ。
こういう派手なヤツは、
試合は大好きだけど
練習は嫌いなのかと思ってた。
でも木兎は、練習が終わっても
際限なく自主練をしたがるから
俺達のコンビが形になるまでに
そう、時間はかからなかった。
好奇心旺盛で、
本能に素直で、
注目されるのが快感で、
褒められるのが大好きで、
そして、自分が大好きで。
自分が輝けることがエネルギーの源で、
そしてその輝きは、誰に対しても平等。
チームメイトもライバルも、
観客も、スタッフも、女の子も、
みんな、木兎に引き寄せられる。
『俺より輝くヤツなんて、邪魔。』
…ついこの間までそう思っていた俺でさえ
木兎が相棒であることが
誇らしく思えるのだから、
その魅力は(悔しいけど)本物だ。
授業に出て、練習して、
その後も気が済むまで自主練して、
それから二人で夜の街に繰り出す。
もともと東京出身の木兎に、
遊び場もたくさん教えてもらった。
『お、ボクトじゃん、久しぶり!』
『あらコータロー、寄って行ってよ!』
どこに行っても知り合いがいて、
あちこちから気楽に声をかけられて、
誰とでも仲良くなる木兎。
…不思議で、聞いたことがある。
『ねぇ、コタローちゃん、そんなに
みんなにニコニコすんの、疲れない?』
『遊んでんのに疲れるわけねーじゃん。』
『だって、中には嫌いなヤツとかさぁ…』
『そんなの、いねーもん。
俺のこと嫌いなヤツは、
俺に話しかけてこねーし。
俺のことを好きでいてくれるヤツのことは
俺、み~んな、大好きだからさっ。』
『…そんなキレイゴト、
この及川さんには通用しないよ?』
『キレイゴト?
俺さ、つまんないことして生きるの、
一秒だってイヤなんだよね。
好きなやつと、楽しいこと、スグやる、
って決めてっから。そーんで俺は、
及川のことも大好きだぜ~っ!』
…ガバッと肩を組まれると、
不覚にもグッと心を捕まれる。
ヤバイ、
俺、女だったら、今、木兎に
惚れてたかもしんないな…(笑)