第2章 荒野に芽吹いた花の名は【秀吉】
秀吉は、
美蘭の愛液と蜂蜜まみれの指先を、
三成が用意した盆に乗っているもうひとつの器…水と金魚の入った硝子の器に、ポチャリと浸した。
…暫くの沈黙の後。
器の中で元気に泳ぎ続ける金魚を眺めながら
「何も隠し持っておらぬし、毒などの仕込みもなかったようだな。」
そう言った信長の言葉に、
「…はっ。」
秀吉は決まり悪そうに答えた。
もし仮に、伽の最中、愛液に混ぜた毒を盛るつもりで仕込んでいたとすれば、今頃器の金魚は息絶えている筈であるからだ。
信長が顎で促すと、
三成は、裸で、自分の意思とは関係なく達せさせられたままの美蘭に駆け寄り、用意してあった湯を張った手桶で手拭いを絞ると、蜂蜜と自分の愛液で汚れている美蘭の身体を丁寧に拭き始めた。
意識はないが、敏感になってしまっている身体が、三成が触れる度に敏感に反応する。
その度に赤面する三成を見てほくそ笑みながら、
「秀吉。これでこの女への嫌疑は晴れたであろう。俺は此奴を手元に置くと決めたのだ。貴様も慣れろ。」
信長がそう言うと、
「…………御意。」
秀吉は、渋々頷いた。
秀吉は美蘭と2人で城下に来ていた。
さんざん仕事に付き合わせて歩かせたので、団子屋でひと休みすることになった。
「ここの団子は、安土随一なんだ。」
腰掛けながらそう教えてやると、
「本当ですか?!たのしみ♡」
美蘭は、満面の笑みを浮かべた。
出会って間もない頃、
美蘭を疑ってかかり、あんなことをした。
美蘭をいたく気に入った信長様の配慮で、睡眠薬を使用したから本人はあずかり知らぬで済んだのだが。
その後もまた戦さ場で信長様を救うなど、疑う余地がなくなった今。
信長様の配慮に、感謝をしてもしきれずにいる。
「…疑って辛くあたって…悪かったな?」
団子をもぐもぐと咀嚼する美蘭の頭をくしゃりと撫でながらそう言うと、
美蘭は、ニコッ!と笑った。
「それが秀吉さんのお仕事でしょ?気にしてないよ。疑いが晴れたなら、嬉しい♡」
「……!」
秀吉は、
ドキリと胸が高なった。