第1章 ここは妖館
しかしそんな都合よく居るわけもなく
三人で部屋に送り届けた
部屋の机に大量に重ねられていた雑誌は見なかったことにしよう
きっと、反ノ塚のものだってことにしておこう
途中でカルタと別れ、私たちはまたラウンジに訪れる
ココアとカフェオレが机上に置かれ、うって変わって静かだった
仕方ない、これといって何か話したいことがあるわけでもないし
これといって聞きたいこともない
ただ少し
ほぼ丸一日SSと生活をほとんどしないのは、信頼関係的にどうかと思うからだ
カルタのご主人は置いておいて
SSとその主人は、自然と近い距離なのだから
「あ!青眞それ私の牛乳!お風呂上がりにとっておいたやつ!」
「どうせお腹壊すだろ。いただきまーす」
「好きだからしょうがないでしょ!?休みの時しか飲めないんだよ!待て!」
きっとあんな感じに
扉の向こうからの賑やかな声がこの静かな場所の笑いをもたらす
「相変わらず、仲がよろしいですね」
「夫婦みたいだよ」
「「夫婦じゃない!!」」
「地獄耳か……」
綺麗にハモった声が扉を介して届き、また笑った
楽しい
今が楽しければ良いなんて
いったいどのくらいこの人生で思えるかな
笑い声のなかに、そんな思考
今は捨てたいな
反省した脳内は、それを罰するかのように私の目に黒い色覚を教え込む
「え?…………停電?」
でもそれは脳じゃなく、目が脳にたいして送ったもので
ただの現実
遠くから聞こえる楽しくない騒ぎの声に、私たちは頷きあって駆け出した