第1章 ここは妖館
ラウンジでご飯を食べていると、唐突に何かを感じる
「………………」
「?」
金属の音
哀兎かな?
パソコンとか直してるのかな……
別段気にするほどの音でもなかった
このマンションに限って骨組みが脆くなってるとかはないはずだし
なんでもないと首を振り、ご飯を堪能する
「あ、カルタだ」
「猫実……」
「…………」
あれー……どうしてだろう
物凄いもの欲しそうな目でオムライスが狙われてる気がする
でもカルタの手には空のお盆があるよね
きっとなんか食べた後だよね
まだ食べるの……?
「……カルタ、食べる?」
「うん……!」
視線負けして、残りを全てあげてしまった
だって食べるか聞いた瞬間のカルタの目の輝きが違ったもん
あげるしかないじゃないですか
「あら、日和ちゃんも食べなきゃ大きくなれないわよ?」
「うわぁ!」
むぎゅーっとお腹を抱き締められ、頬を擦り寄せられる
誰でもない
確認も要らない
雪小路さんだ
それしかあり得ない
「ゆ、雪小路さん……手つきが嫌なんですけど」
「ただのスキンシップよ。スキンシップ!」
にしても息が荒いぞこの人
美人なのに……本当、残念
「スキンシップにも限度が……それと、部屋にお菓子とかあるので、大丈夫ですよ」
「そう!ならたんとお食べなさい!あたしはもう少しむっちりした感じが好みなの!」
「誰も貴方の好みに合わせようとなんてしてません!?」
「良い!?その足は何のためにあるの!見せるためでしょ!?」
「歩くためですけど!?」
終わりの見えない会話に疲れてくる
助けを求めようにもここに常識人はいない
せめて青眞が居ればな……
何とかしてくれるはず……
ぎゃいぎゃいと騒いでれば、あっという間にカルタのお皿は空
「ご馳走さま……」
「ちょっと待ってカルタ。ここ、ケチャップついてる」
「?」
「ここここ」
ハンカチで口元を拭ってやる
普通の行動だった
なのに、隣で人が倒れる
……雪小路さん、床は流石に汚いんじゃないかな
「限度を越せば可愛いって殺戮兵器だね……」
「野ばらさんにとってはね」
さて、どっかに反ノ塚でもいないかな