第6章 思い出と共に
「…………」
執拗に鳴り響く携帯を睨み付け
そのまま投げる
壊れたった構わない
むしろその方がいい
だけど
それが地面に落ちた音は不幸にも聞こえなかった
聞こえたのは
呆れたようなため息
プラス
声
「……帰りゃいいのに」
「黙って。これは私の話なの」
「切っていい?」
「寧ろ壊して」
「それはちょっと」
着信音が消え
やっと息をつく
沈み込むように布団に突っ伏し
瞼を閉じた
「たった数日、多くて一週間だよ」
「…………」
「……実家までは送ってあげるから」
「…………」
「……迎え、行ってあげるからさ」
「…………」
「…………流石に、それ以上は出来ないよ」
わかっている
こんなの我が儘だってことも
彼が私の家に近づけないことも
私が彼の家に近づけないことも
わかってるけど……
「……あの人たち、苓の悪口ばっかり言うんだ」
「…………」
ぎゅぅと、シーツを強く握りしめる
溜め込んだ怒りはこうしないと自分が何かしそうだったから
「庇うと、何か脅されてるんだろ、安心しろすぐに解約してやるからなって…………そんなの毎日聞かされてたら、帰りたくもなる」
「……でもそれは、今に始まったことじゃない」
「だからなに?」
「…………ありがとう」
何に対してのありがとうかは、聞かなかった
それでいい気がしたから
目を開けて、顔だけ向ける
視線に気付いた苓が怪訝そうに首をかしげた
私はその姿に微笑み
もう一度目を閉じてから開く
「待ってるよ。ここで。ちゃんと、お土産ちょうだいね」
「うん。多めに……たくさん」