第6章 思い出と共に
「ビックリしたなぁ……なんだぁ?日和か?」
対して驚いたように見えない反ノ塚の言う通り
さっきまで居た日和が消えてる
「……最近猫実さんの機嫌が悪いようだが」
「追い掛けなくてよろしいのですか?苓さん。今にも何か壊しそうな勢いでしたよ」
「猫実……怒ってた」
「あいつ微妙に怒ると怖いよな……」
「おお、悪が怖がってる~」
「怖がってねぇよ!」
「……まぁ、ともかく、何かあったんだろ?苓」
「………………」
青眞の問いに
苓は黙る
見えないはずの扉から彼女を眺めるようにしてから私たちに戻す
その途中
なぜか夏目さんを睨んだような気がした
「……実家に戻るんだよ。俺たちも。けど、日和は帰りたくないらしい」
「どうして?日和ちゃん、残る用事もないでしょうに」
「もしかして、苓と離れたくないー……とかじゃね?」
「渡狸じゃあるまいし」
「なんだとこのやろう!!」
「どうどう」
挑発に乗らない
いや、あながち素での一言かもしれないけど
話がどんどん脱線してしまっては、聞きたいことも聞けない
「で?どうして帰りたくないの?」
「嫌いなんだ、実家が。珍しい話じゃないでしょ?日和は特に実家への不信感が強いだけ。なのに向こうからの連絡がウザいんでしょ」
きっと、俺から離したいのもあるんだろうけど……と
ポツリとこぼされた言葉は
私にしか聞こえなかったようだ
顔色を建て直した彼は
困ったように微笑んだ
「ま、何とかするだろうから暫くほっといてやってくれる?」
その顔は
どこか辛そうにも見えた