第5章 予兆の香り
「そういえば、」
と、自身の頬に手を添えて、雪小路さんは問う
「日和ちゃんは手紙、書いたの?」
「?……うん、そりゃまぁ、企画の現場にいたし。どうして?」
「ほら、小太郎君みたいに誰か宛に書いてる人もいるじゃない?自分宛?それとも誰か宛?」
そういうことか
私は胸ポケットから手紙を出して掲げた
「自分宛と言ったら自分宛だけど、哀兎とか、青眞とか、カルタとか……色んな人に一言ずつ感謝みたいなの書いてるから、皆宛?」
「やーん、とっても良い子!!お姉さんには!?お姉さんにも書いてくれた!?」
「わ、わ、ちょっと手紙がぐしゃぐしゃになるから抱きつかないで!皆って言ったじゃん!!」
「とっても嬉しいわ!私絶対読むから!」
それはどうも……
感謝といっても、こんな人だったからこんなところがよかったよとかなんだけど……
過去の皆がどんなだったか伝えるために
後……
「………………」
『私は絶対に貴方に恨みを残さない。だから貴方も残さないで』
『私の存在を、恨みを晴らすためだけにしないで』
……私は、次の私に絶対そんなことさせない
ここで私の過ちを、終わらせる
「……?……日和ちゃん?」
「ううん、なんでもない。あ、皆来たみたいだ」
にっこりと笑って促す
あの人数だと
やっぱりもう少し大きめに掘らなきゃな、と思いながら