第5章 予兆の香り
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そんな謎の声を聞いてから数週間後
夏目さんの案により、タイムカプセルを埋めようという企画が執り行われた
なんでも
小太郎君がお父さんについて悩んでいたらしく
じゃあ未来のお父さんに手紙を書こう、ということらしい
ちょうどその場に居合わせた私と反ノ塚は
全員分の便箋とカラーペン、シールの調達
そして穴堀を用使った
他の人への伝達は反ノ塚がするというので
戻ってくるまで雪小路さんと木の根もとに穴を掘っていた
「かった……どんぐらい掘れば入るんだろ…………」
「疲れてる日和ちゃんメニアック!!滴る汗とか眩しいわ!」
「真面目に答えてもらえませんかね?」
ただでさえこんな肉体労働柄じゃないのに……
皆が手紙を書いているというからかって出たけども……
「ふぅ……こんなもんかな。浅い気もするけど、後は反ノ塚に掘ってもらおう」
「だけどまぁこんなこと思い付いたわよね。手紙を残すなんて」
「そうだね……確かに通常タイムカプセルって二十歳とかで開けるし。これが開けられるのはまた先祖返りとして生まれてからだからもっとだ」
「何百年後、とかじゃないからまだしも…………忘れちゃいそうね」
「その辺は夏目さんが覚えててくれるんじゃない?」
企画者あの人だし
ふぅ……と、座ると
小太郎君の筆が止まってることに気づく
「かけないの?」
「うん……」
そうだよなぁ……何て書いたら良いかなんて誰もわかんないよな
どう答えようかと首を捻ったが
父親である河住さんの言葉により
手を加えることはなかった