第1章 ここは妖館
無音のエレベーターに、やけにはっきりとしたSSの声が響く
「家猫みたい」
後ろから聞こえたそれは、皮肉とも聞き取れる
私はその声に向かずに答える
「どういう意味」
癖だろうか
彼は私の後ろを歩く
SSは従僕と言う訳じゃない
その理由は、聞いたことがない
素直に出た問いに、用意したように返してくれる
「別に。実家より居心地良さそうだなって話」
「あー……そういう意味。そんなに仲良くないから」
「新しく来たやつも、同じかもしれない」
「見てきたの?」
「ちょっとだけ」
「可愛かった?」
「重要視するところそこ?」
いやいや、大変重要
かわいいは正義という素晴らしい言葉があるのだから
呆れたようなため息の末、結論
「可愛い」
「よし!会いに行こう」
「大概二人のこと言えないよな……」
「運命的な出会いのためだよ。だから会う」
この運命は、少しずれる
けれど、同じ道をたどるようにできている
「前の私もそうしたよ、たぶん」
きっとそれは
「……どうだろうね」
抗えぬ時間の残酷さのせい