第1章 ここは妖館
そのまま部屋に戻ろうとしたのだが……
「…………」
なんだろう、この構図
エレベーターの扉が静かにしまっていく
うん、それでいいと思う
それがこの場をまとめあげるには最高の締め括りー…………
「なわけあるか!」
「ちょ、エレベーター壊れるっ……!」
締め括らせてもらえないようだ
勢いよくエレベーターの扉が手動で開かれ、中から叫ばれる
「そこで無言で閉まるのは辛いものがあるよ!?」
「え、だって……突然だったから」
エレベーターの中で一人空気の状態でカルタと哀兎が抱き合ってるシーンが扉開閉と同時に突き付けられても……
どう返していいかわからない
たぶん途中で一緒になったんだろうけど完全に青眞が空気扱いだった気がするし
いや、空気だった、実際
「おはよう……猫実、苓」
「おはよう、カルタ」
「おはよ」
ぼんやりとした独特の目で挨拶をするカルタに返し、笑顔で哀兎に言う
「良かったね」
「もうストレスなんて吹き飛んだよ。カルタの抱き心地は最高だから」
どうやらストレスによる衝動であっていたようだ
きっと新しい人にも抱き付くことだろう
それから……
「あ、いたんだ。青眞」
「おい、仮にも真にも主人にそれ言うか……」
「てっきり空気かと思ってたよ」
「ふざけるな!」
やっと気づいてもらえたようだ
静かにご愁傷さまですと手を合わせ、問いかける
「皆、今からどこに行くの?」
「ラウンジだよ。ご飯の時間だし」
「お腹……空いた」
「おまえ万年腹減ってないか……」
そういえば、反ノ塚もご飯食べるって言ってたな
……ご飯か
「猫実はどうする?」
「私?うーん……」
チラリと隣を見て、欠伸が視界に入る
……後で良いかな
別段お腹空いてないし
休みの日って元から食べないし
「後でいいや。苓は?」
「寝るからいい」
「だそうです。ありがとね」
お礼をして、入れ代わるようにエレベーターに乗り、皆に手を降るのだった