第5章 予兆の香り
「あいつはS!あいつはM!!そしてあいつはドMと見せかけたSだ!」
「公私混同もはだはだしいわ!!ちょっと黙れ!」
「………………」
「あはは…………?どうしたの、凜々蝶」
「いや……」
もう随分と長い間あのジャッジを聞いていた私は
突っ込む元気も失せてすべて青眞と渡狸に任せていた
時間が過ぎていくごとに疲れとは違う気分の沈みをしている凜々蝶を覗き込むと、明らかに落ち込んでいた
どうしたのだろうか……
少し回りをキョロキョロ確認して
蜻蛉たちから少し離れたところに連れ出す
「今日なんかあったりした?」
「……み、御狐神君との約束が…………」
「わ、待て待て!泣くのはなし!!」
泣かれると困る
なんとかギリギリなだめ
どうしようかと首を捻る
私運転できないし……そもそも車無いし
こういうとき反ノ塚が居ればな…………
変化して身体能力向上した状態なら、凜々蝶を抱いて帰るのも可能だけど……
「あ!青眞!」
「あ?」
「いやなんだよその返事」
「疲れてんだよこっちは!」
苛立ちながらも来てくれた辺り
相当あいつから逃れたかったようだ
「そんなことより、凜々蝶を妖館まで帰らしてあげたいんだよ」
「へぇ……それはまたなんとも唐突に」
「そこで、鎌鼬である君に頼みたいことがある」
「素晴らしく嫌な予感しかしない」
「それたぶん当たってる。つむじ風起こして、それに乗って帰ろう。鎌鼬って元々、風に乗って現れる妖怪だし」
「そうだけど…………哀兎、しっかり凜々蝶守れよ?」
「もちろん!青眞よりしっかり守るから大丈夫!」
「それはそれで悲しいなおい!?」