第4章 住人たちの帰還
「え…………」
驚いて目を開き
夏目さんの片目と目が揃う
バッ……!!
揃った目がお互いを捉える前に
合わさる前に
交わる前に
遮るように苓の体が入る
「あーもー、……良いとこだったんだけどなぁ♪」
「…………何視た?」
「睨まないでよ苓たん……♪何も視えてないし」
「……本当に?」
「ばっ、バカっ苓!夏目さんに何てこといってんの!?」
置いてかれそうになった話に追い付く
私は知ってる
彼が私より前に出るときは
その相手を
警戒しているときだって
それはたぶん夏目さんもわかってる
だからこそ
こんな失礼なこと許すわけにはいかない
「良いんだよ~日和たん♪前世の記憶を伝えるのはご法度なんだ。苓たんが正しい……」
「いやでも……」
「逆に聞くけど、どうしてそんなに知りたいの?全てが良いこととは限らないんだよ?」
「……それは」
答えれない
私だって、何で知りたいのかわからない
どうしてこんなに前世を求めてるのかわからない
ただ心のどこかに
未練がある
自分の知らない自分の
未練がある
どんな死に方をしたのか
その未練がなんなのか
それを突き止めたいだけ……
それを
突き止めて欲しいと、心が唸ってる
「……何かが、私のなかに未練がある……から?」
「…………あぁ、そっか。日和たんはそうなんだね」
「?」
「化け猫は、人間に残忍な殺され方をした猫が、恨みを晴らすために化け猫になって人を襲うらしいよ。君のそれは、未練じゃなくて……」
恨みだよ