第4章 住人たちの帰還
ウォークラリーは結局
夏目さんが仕組んだ渡狸とカルタを会わせるための口実だったらしい
屋上庭園で
風に体を靡かせながら
後程聞かされたことを思い出す
……渡狸は
カルタを守るために強くなろうとした
もちろん
SSであるカルタは守ってもらうじゃなくて
守る側
それでも
守りたい
「……好き、なんだな」
好きだから
一緒にいたいから
守りたい
きっと御狐神さんも一緒
どうなるんだろうか
もし、今みたいな関係じゃなかったら
渡狸がSSで
カルタが主人というのは
あり得る物語なのだろうか
それとも
それはカルタと渡狸とは言わないんだろうか
今が一番だと
あの二人はそう思えるんだろうか
「……落ちる、日和」
「…………落ちても平気、猫だから」
柵の上に立つ私に
苓が注意する
降りることなく
私は彼に聞く
「前の貴方は、誰を守ってたんでしょうね」
「………………」
もちろん
彼にその記憶はない
私にも
ない
答えれなくても仕方ない質問
だけど
苓は答えた
「……それは、もうどっちでもいいんじゃない?」
「どういう意味?」
「今、俺はお前を守ってる。それ以外、どうでもいいんじゃないの」
「前世の自分は別人、ってこと?」
「違う。全部俺だ。けど、例え違うやつを守ってたとして、其れが今、なんの理由になる?」
「……難しい」
「難しい質問したの、お前だから」
「すみませんね」
タン……と、
柵から飛び降り
歩き出す
そうすると
人影が横切る
「?」
「そんなに知りたい?僕が教えてあげようか」
そこには
夏目さんの姿
「君の過去も、君の前世も」