第3章 懇親会の夜に
「なぁ……もう諦めたらどうだ?」
「後少し!後少しだから!」
「もうちょっとで取れるから!」
反ノ塚の制止を聞かずに私と哀兎はガラスにくっつくようにしてあるものを取ろうとしている
クレーンゲームではよく子供たちがやってそうな光景だ
でもそれをやっているのは年相応の高校生
ぬいぐるみひとつのためにいくらをかけているかわからない
……いや、ざっと四千円かな
しかもこのあともうひとつもとろうとしてるし
「あー!取れない!っていうか嵌まってない?」
「店員さん呼んだ方がいいかもしれない」
その店員さんも端からずっと見ていたのか
それともそういう仕様なのか
取りやすい位置に設置してくれ
取り方まで伝授してくれた
お陰さまで二個目も無事ゲット
総額は聞かないでいただきたい
もしかしたら買った方が安かったかもなんて思いたくもない
大きい犬のぬいぐるみを持って歩くというのはなかなか注目を集めたけど
それ以上に反ノ塚が視線を集めてくれたから気にはならなかった
だって、あの容姿で景品のお菓子大量に持ってたらおかしいでしょ……
どこであんな荒稼ぎしてきたのか……
「反ノ塚はどこでそんなに……」
「ん?あぁ、これか?」
「うん」
「これ全部取ったの青眞だぞ?」
「え……」
「あいつ計算高いからなー……店員が涙目だった」
当の本人は哀兎と二人で音楽ゲームの方に行っている
あれ、これってもしかしてあの人に取らせた方がお金かからなかったんじゃ……?
哀兎には言わないでおこう……怒られそう
……と、そうだ
「じゃあ私はそろそろ苓を迎えに行ってくるぜ」
「あ、そっか。本屋に居るんだっけ」
「そうそう。何かゲームとかは得意じゃないって。家がソフトウェア関連だけど、興味ないんだって」
逆に見すぎて興味ないのかも
「二人よろしく。すぐ戻ってくるつもりだけど、もしかしたら面白い本があったりするかもしれないから」
「おー」