第1章 ここは妖館
「…………こわかった」
「いやおまえがな」
この男の人の記憶は大きな骸骨の姿でブラックアウトしてるだろう
目が覚めたらなんだあれは夢かで済まして貰えそうなくらいの恐怖のはず
炎と氷で見事な臨場感が加わってたし
リアルホーンテッドハウス、みたいな
「さて、この人どうする?」
「埋めとけばいいんじゃないかな」
「哀兎、それ死なない?」
「大丈夫!たぶん死なないよ」
いやたぶん死ぬな
男性には容赦がないらしい
「あの……すまない」
「ん?」
そんなことを話していると、私に話しかける一人……二人か
見かけない顔
違うな、会おう会おうと遠回りしてた二人
「ここに住んでいるものにはほとんど会っているものだと思っていたが……まだ居たんだな」
新しい二人
私は彼女と彼に向き合うと、笑った
どっかの誰かが言ってた気がする
第一印象って大切だって
「僕は新しくこの妖館に入った白鬼院 凛々蝶だ。まぁ、仲良くするつもりはないがよろしく」
おー……これか
想定外の毒づきぶり……
「凛々蝶様のSSをしております、御狐神 双熾と申します。今後、よろしくお願いします」
それに反してこの丁寧さ
執事でもやってたのかな……?
そんなレベルでなんか似合ってる
私はそれでも遠慮がちにだが差し出された小さな手の行き場を盗んだ
「私も挨拶が遅れました。猫実 日和です。凛々蝶、でいい?よろしくね」
「な、名前っ?い、いや、まぁ、別に僕は構わないが……」
照れた様子の凛々蝶に、第一印象のための猫かぶりは捨てた
そんなことしなくても、この子とは楽しめそうだった