第6章 継続は力なり
戦中の思いがけない言葉に、モヤモヤがパッと晴れた。
「は?何でそんな縁起のねェ話になる?」
背中合わせのまま話した。
「銀や桂は素直じゃないけど、仲間が死ぬのは辛いから」
アイツらが?そんな気遣いこっちは願い下げだな
「それに、松陽先生も」
それは否定しねェ…
※敵さんは空気を読んで、自ら襲ってこない設定
「それァ俺だけじゃねーだろ?」
この戦に参加してる中には、身内がいる奴もいる
自分を慕ってくれる大切な奴が
「てめェにもそういう奴がいるだろ?」
「……」
雅は間を空けてから、口を開いた。
「私が死ねば誰が負傷者を治すんだって、ヅラによく言われる…」
辰馬にも言われた
“軍医のおまんがいなければ、死者はバッと増え全滅じゃき。この戦もとうに負けちょる”
私も自分の役目を自覚してるさ
普通の志士だったらともかく、私が死ねば仲間を助けられなくなる
ただ、まるでひきいみたいで…
高杉は警戒心でピリピリしてた空気を和らげ、そろりと言った。
「お前が仮に医者じゃなかったとしても、俺ァてめーに死んで欲しくねェのは変わらねェが」
「!」
背中合わせで顔が見えなく、お互いどんな表情になってるか分からなかった
雅は驚いて少し目を見開いてた。
“軍医”として戦場にいたにも関わらず、“戦の要”じゃなくてもそこまで…
毎度思うが、何でそこまで?
高杉は自分の発言に疑問を抱いてた。
“死んで欲しくない”なんて、誰にも言ったことがなかった
コイツに限って、何でだろうな…
雑談してる間に呼吸も整ってきた。
2人はまた、周りの敵への警戒心を強めた。
「アンタには貸しを作りたくないから…今度は私がアンタをサポートする」
は?喧嘩売ってんのか?
「余裕のない奴の言うセリフかそれ?いつも1人で突っ走りやがって」
「無茶して足ケガした人の言うセリフそれ?」
顔も合わせず、2人はもめ合い始めた。
無愛想な雅でも、高杉と喧嘩になることもややある…
もうそろそろ…
「援軍が来るまでもつか分からないけど、その前に一つ言っておく」
「じゃあ俺も一つだけ言っておく」
“助けられるのは願い下げ”な2人はこの言葉だけ残した。
“死ぬなよ。低身長”
振り返らず、反対方向に駆け出した。