第6章 継続は力なり
あぁ。通りで上手いわけだ
黒子野の手つきやデキが昨夜の雅と重なった
自分は銀時より圧倒的に上手い自信はある
だが、黒子野の方が上と思うと…
運動会のかけっこで2位をとり、母親に「頑張ったね」と言われても、内心では
(1位がよかった…)と悔しがるガキみてーだな
そんな下らないことを考えていた
「雅さんはすごいですね。何でも出来て」
高杉は黒子野の言うことに、大いに共感した。
アイツはそうだ…
むしろ、欠点を見つけるのが大変なくらいだ
「何というか…姉さんみたいな」
(! 姉?)
意外な発言に、高杉は目を見開いた。
「あっ、すいません。私情を挟んでしまって」
「別に怒ってねェよ」
てめェは謝りすぎだ
少し驚いただけだ
・
アイツを女だと見る野郎はいるが、
・・・
そんなジャンルもあったとは
「てめェがアイツのことを慕ってんのは知ってる。“姉貴”と思ってんのは知らなかったが」
「はい。この戦に参加して雅さんに出会ってから、いろんなこと教えてくれました。僕に姉はいませんが、何というか…姉さんって、こんな感じなのかなと」
人混みの中にも関わらず、いつも影の薄い僕にいち早く気付いてくれて
応急処置の仕方を丁寧に教えてくれたときも、まるで…
その微笑みは、本当に姉のように慕ってる嬉しそうな表情だった
(姉貴か… ! ちょっと待て)
アイツが姉貴となると…
イメージしてみた。
弟に目もくれず、ずっと本を読んでる
遊ぼうと言っても、“一人で遊べば”と冷たい返事で断る
話しかけても、目を一瞬合わせるだけでそれっきり
しかも怖い目で
あんな奴に弟…想像できねェ…
身内でも無愛想なイメージしかなかった
「初めは僕の周りの人は、雅さんは一見近寄りがたいという印象があったらしいです」
ああ、俺も最初はそうだったな
「でも僕はそうは思いません。この戦で交流を深めるうちに、とても優しくて優雅な人だと、そう思いました」
高杉も話を聞いてるうちに、つられて雅のことを考えた。
言いたいことは分かる
アイツは昔から、自分から遠ざけていたような感じだった
一見周りに関心がなさそうだが、意外に周りをよく見ている一面もある
それは軍医としての義務か、それとも…