第6章 継続は力なり
そもそもアイツは、笑った顔と無表情のツラが全然違ェんだよ
(どんだけギャップなんだよ…)
いつものぶっきらぼうなら、普通にできる
ただ、昨夜に限ってアイツが少し違った風に見えた…
肝心のアイツは…
(もうそろそろ来るよな)
「待たせた」
雅はタイミングよく鬼兵隊と合流した。
「遅れて申し訳ない。患者の確認に手間取った」
いつも彼女は、寺の中にいる負傷者の治療は誰でも応急処置ができるくらい最善を尽くしている。
今朝も包帯を取り替えたり傷の治りを見たりなど、細かいことも毎日欠かさずやる。
志士の1人が丁寧に挨拶してきた。
「おはようございます雅先輩。一緒に戦えるなんて、自分光栄です。今日もよろしくお願いします」
「あ、ありがとう」
丁寧で堅苦しい態度に、少し困惑した。
「でも、私は年下だけど」
「年なんか関係ありませんよ。俺たちにとって雅先輩は尊敬すべき人なんですから」
周りの志士から敬いの目で見られていた。
高杉はその様子を横目で見た。
ほとんど無表情で、口数も少なく話も好まない
昨日の微笑みや優しい目とは違う
(昨日見たのは、気のせいだったのか?)
「高杉さん」
雅のことをぼーっと見ていたら、黒子野に声をかけられた。
「あの、失礼ですが昨夜何かあったのですか?少し様子が違って見えたので」
昨日のことを唐突に聞かれた。
(ギクッ)
「いや、深酒しちまっただけだ」
すぐさま思い付いた言い訳で焦る高杉だが、黒子野は腑に落ちた様子になった。
「やっぱりそうだったんですか。少し顔が赤かったので」
(全てお見通しか…!)
そうだった。コイツ影薄くて一見物静かだが、人間観察は他に比べればピカイチだ
さすが周りのことをよく見てる、
“俺たち”(キセキの世代)のサポート役だ
「僕で良ければ、相談に乗りますよ」
「…ありがとうよ。少し楽になった」
高杉の表情は少し穏やかになった。
「良かったです。こんな僕にとって高杉さんも雅さんも光ですから」
(!)
黒子野は微笑んだ。
「ボクは“影”(脇役)だ。
……でも影は光が強いほど濃くなり光の白さを際立たせる。
“光”(主役)の影として、ボクはアナタたちを全力でサポートします」