第5章 人は皆 十人十色
今の自分を見られれば、俺は一生引きずることになるだろうな
特に、アイツらにいじられるのは目に見える
黒歴史。いや、トラウマ確定だ…
自分でも分かってる。赤くなってんのは…
さっきまで冷たかったアイシングが全く感じられなくなった
高杉は、普通の顔に戻るまでその場で座り、うなじあたりを触って壁に寄りかかった。
今でも脳裏に焼き付いてる、アイツのツラ
うまく笑えないようで、慣れてなさそうな不器用な微笑み
(…思い出した)
そうだ…あん時 初めて見たんだ
回想
試合の片付けが終わり、教室に戻ろうとしたら俺ははっと思い出した。
「そういやお前、どうすんだ?」
「何が?」
「何がって試合の賭けだ。約束しただろ」
ああ、あれか。
“何でも命令ができる”
(私はした覚えはないけど)
と言われても何も望んでないし、高杉をこき使うなんてそんな性格の悪いことも望んでない。
たとえ願いがあったとしても それは…
「……」
無言のままの雅にじれったく思う。
「…晋助で…いい」
え?
自分から言うのが恥ずかしいのか、俺は顔もあわせず頬も少し赤くしてモジモジした。
「俺の名前、晋助って呼んでいい。俺も…雅って呼んでやらァ……」
「……」
二人の間にしばらく沈黙が流れた。そして、その沈黙を破ったのは
フッ
(!?)
雅は硬い表情から微笑みをこぼした。
試合の時とましていつもと全く違う、優しい目。
(コイツ誰だ?)
笑えたのか?
いつも冷淡で笑わねェから、人間らしくないなんて思ってたが。
その時雅が
いつもと違って子供っぽく見えた
「そういう自分勝手な所とか、私アンタのことは苦手だな」
喧嘩売ってんのか?自分勝手なのはテメーだろ?
俺だって、お前のことが…
「でも、不思議と悪い気はしない。今はアンタのこと嫌いじゃないよ」
(!)
自分の本音みたいなことを微笑みながらこぼした。
雅が自ら話した本心を聞くのも、初めてかもしれない。
急にもどかしさが押し寄せてきて、雅に背を向けた。
自分でも何故そうしたのか、分からなかった。
(な、な、何緊張してんだ俺?)