第5章 人は皆 十人十色
「人にはない不思議な力を、この桜は持ってるって予想っていうか確信みたいなものを感じるんだ」
(……)
俺も雅と一緒に夜桜を眺めた。
さっきと何も変わってねェのに、さらにその桜に惹かれた。
授業中…何となく窓の外を眺め、目に入った桜。
カワセミの鳴き声と風で揺れる桜の木の枝。
何も考えず、ずっと眺めた。
日が経つうち、花びらは散って全て葉っぱになった頃には、外を眺めることはなくなった…
昔から桜はよく見た。
きれいだとは思ってたが…
チラッ
不意に隣を見たら、雅が頬をついたまま桜ではなく俺の方をじっと見てた
(?)
「な、何だよ…?」
さっきもガン見されてたが、俺に何かついてるのか?
俺の問いかけに応じず、じーっと眺めたまま、
スッ
雅はこっちに手を伸ばしてきた。
(!)
無言のまま俺の頭に触れた。
手を離すと、雅の指先には桜の花びらが1枚あった
(花びら?)
それを見てすぐ察した。
雅は俺の頭についてた花びらを取ったんだ。いつのまに俺の頭に…
(本当についてたのか…)
てっきり、撫でられるかと…
15cm下の奴に子供扱いされるよう頭を撫でられる。
そんなことを想像した自分が恥ずかしくなってきたじゃねーか。せめて逆だろ?
(いや、それ以前に言えばいいだろ?)
そうすりゃ、俺が自分で取るだけで済んだだろ?
吹いてきた心地いい風で、花びらは雅の指先から離れ地面に落ちていった。
地面には、ほとんどが褐色のたくさんの花びらがある。
それを見れば、もうすぐ夏がくるとよく分かる。
「戦場の敵には一瞬の隙も与えない用心深いアンタが、桜の花びら1枚にも気付かないなんてね…」
どういうことだ?喧嘩売ってんのか?
すると雅はそのまま続けて言った。
「でも、晋助って、意外と桜が似合うね」
(!)
俺は驚いた。
雅にお世辞を言われたから。……いや、それもそうだがそれ以上に、
雅は微かに口元を緩め、クスリと笑ってた