第5章 人は皆 十人十色
『こんな戦で、女の笑顔ほど 見て気持ちが和むもんはねェと思うんだがな』
今の表情は、笑顔……とは言えねぇが、今までの顔よりかはよっぽどいい。
(普段もそんな表情でいりゃいいのにな…)
そんな固くならず何も考えず、力の抜けきった優しい表情。
元々コイツァ、いつも身構えてるというか女の自覚がねェつーか……あぁ、よく分かんねェ。
俺は片手で頭をくしゃくしゃして悩んだ。
攘夷四天王の中で、女を好まないそれか好まなそうな高杉が、恐らく一番 女慣れしてないのかあるいは苦手なのかもしれない…
※これはあくまで作者の私から見た印象です
昔、遊郭に繰り出したときのことで、モジャモジャに“黙って目血走らせて酒飲んでるだけの、クソつまんねェ男”と言われた経歴もある。
元々不器用な人だが、女相手となるとなおさら。
(雅は表情の変化が全くねー、歴としたポーカーフェイスだ。何考えてるかも分かりづれェ。昔も今も)
今思えば、昔は互いに誤解してた部分的もあったかもしれねェ。
俺もアイツが独りでいるのは、「周りがうっとうしいから」だと思っていた。
だが、実際そうじゃなかった。コイツはただ、あん時まで、
独りでいる以外に
目を向けようとしなかったんだ
俺だって、独りの方が気が楽なことはあるが、コイツの場合それしかなかったんだ。
あの試合した日から、コイツとは段々と話すようになったが、それでも、俺はコイツのことを今でもよく分からねェ。
何故なら、雅は自分のことを話そうとしないからだ。
銀時やヅラも、皆目見当も付かねーだろうぜ。
俺たちでも、未だに雅の腹の中がよく分からない。
現に俺は、雅は今は穏やかな顔だが、裏にはもっと別のことを考えてんじゃねーかって思ってる。
泣くほどのものを何か…
「昔から思うけど、植物って不思議だと思う」
(!)
雅が自ら話し始めた。
「人とは違う生物あるいは存在は、人が持ってない性質や特技、能力を持ってると思う。
魚は水の中で呼吸ができる。鳥は空を飛べるように。
私は医療薬作りによく世話になってる」
辰馬が言ったのとは、ちょっと違うかもしれないけど
十人十色って、こういうものでも言えるんじゃないかな。