第2章 何事もタイミングが肝心
「何か用でもあんのか?」
「はい。手当てのお礼をと思いまして」
黒子野の手にはお菓子のようなものがあった。
「アイツ確か、甘いもの苦手じゃなかったか?」
「あぁ。そうですか…」
高杉の言葉に黒子野はまたさらに残念そうに呟く。
「では、お煎餅とか食べますでしょうか?」
「あー食べるんじゃねェか。てか雅はよほど好かれんな。ドラえもんのしずかちゃん以上に紅一点だしな」
モテないことを気にしてる銀時が、羨むかのように比喩した。
確かに雅はこの軍での唯一の女。
しかも医者だ。
「誤解です。確かに雅さんは優雅で素敵な女性ですが、僕はそういう意味では…」
「おい。そろそろ止めとけ」
高杉が黒子野の話を止めた。
・・・・・
「アイツはそんなもんのためにここにいるわけじゃあるめェ」
「…すいません」
可哀想に、黒子野はどんどんブルーになっていった。
高杉はさっき雅が行った方を見た。
(さっきも別の野郎に連れて行かれたが、何もなければいいんだがな…)
「あの…1ついいですか?」
『?』
黒子野はかしこまり銀時と高杉に丁寧に聞いた。
「お二人は確か、雅さんの幼なじみと聞きましたが…」
「それがどうかしたのか…?」
「変な意味じゃないですが、“仲間”として彼女のことを知りたいというか。もし差し支えなければ教えてくれませんか?」
『……』
黒子野は真面目な男だ。純粋に知りたいと思ってることくらい、2人は分かっていた。
銀時は夜空を見上げた。
「そうだな…俺もよく分かんねェ」
「アイツは俺よりも先にあの塾にいたよな。お前が一番付き合いが長いはずだろ?」
もうケンカしてたことは忘れたらしく、2人は普通に話せた。
「アイツは昔から、人との付き合いを好まなかったというか。そこらへんはしずかちゃんに似てなかったな」
未だにドラえもんネタを引っ張る……
「実は、今まで少し気になってたんですが、
・・・・・・・・・・・・・
彼女の姓を聞いたことなくて…お二人はご存知なんですか?」
『!』
その言葉で2人は思い出した。
あの時の、まだ松下村塾にいた頃の雅とのやりとりも出会いのこと。
それは、高杉が松下村塾に入って間もない頃…