第5章 人は皆 十人十色
((げッ!))
「歴史の授業のつもりが、いつの間にか体育になっていたとは知りませんでした。私も混ぜてくれればいいのに」
いつも通りのお茶目な振る舞いではあるが、この場にいる皆はいつも通りにできなかった。
授業をサボるのいうのは、
・・・・・・
そういうことだ。
「厠と聞きましたが、随分腹を下してたようですね晋助」
優しい問いかけも、銀時たちにとっては悪魔の囁きに聞こえた。
高杉は「ヤベッ」と思いつつ、松陽は近付いてくるも自分は動けなかった。
松陽が高杉の目の前に立った。
「元気なのは結構。ですが……
トイレなど小学生レベルの嘘で、私の目を欺くなど百年早い」
ゴンッ!!
外でも地面にめり込むほどのげんこつを食らい、高杉は一発KO。
「雅」
ビクッ!
雅も松陽相手となると、少しビビった。
「えっと…」
彼女にも元々用事があってすぐ戻るつもりが、高杉に言われ道場で試合をするという成り行きになってしまった。
あれから随分時間も経ち、先生もお怒りに決まってる。
「サボリの常習犯の銀時に続き、君も悪ガキになりましたね」
返す言葉がない。
スッ…
松陽は握り拳を振りかざし、雅はギュッと目をつぶった。が、
ポンッ
(?)
頭に降りかかったのは鉄拳ではなく、優しい手の平。
「でも、それ以上に 本気で挑む相手に手加減をするのもダメですよ」
松陽はニコッと笑った。
げんこつされると思いきや、なぜヨシヨシされるか分からず、また少し混乱した。
松陽は知っていた。
雅が強い相手でも、今まで本気にならなかったことを。
実は、松陽が最初、高杉の試合相手で雅を推薦した理由は
・・・・・・
そこにあった。
雅は、松陽が出会ったときから誰にも心を開かなかった。
松陽でさえも、それは難しく 思い悩んでいたのだ。
・・・・
銀時とは違う意味で、訳ありで少し特殊な子だと気付いていた。
言われたことをちゃんとやる真面目な子ではあったが、なかなか笑わず銀時たちのような自由奔放とは程遠い。
まるで、“何か呪いのような鎖に縛られている”、ような感じがしていたのだ