第19章 友が為
ドクンッ
父親。
高杉の脳裏に、3日前に言われた辰馬の言葉がふとよぎる。
『なんか少し雅に似てるのう』
松陽と雅の顔つきは、確かに似ている。
特に目元だけを見ていると、時に彼女が見せる笑顔が松陽のそれとどうしても重なってしまう。
高杉は自分の頭を掻く。
(あの馬鹿のせいで、
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今まで感じてきた違和感が、
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はっきりとしちまったじゃねェか)
そんな高杉の苦悩とは裏腹に、雅にも、松下村塾にいた頃から抱いていた"別の悩み"があった。
「元々、私が松下村塾に行き着いたのは、銀の気まぐれでもあり、松陽の気まぐれだ。私は…あの2人の繋がりを邪魔する気は、全く無かったんだけどな…」
今でも思い出す。
寒空の雨の中で、古びた寺の廃墟で雨宿りしていたら、天邪鬼が来た。
『何だコイツ?こんな心霊スポットで真っ昼間に肝試しして、小便ちびったってか?』
天から雨が降る中で、天道様は晴れ空どころか、小悪そうな小鬼を寄越してきた。
行く宛もなく、帰る場所も志も、皆なくして、私に残ったものは何も無かった。
そこにあったのは空虚な器ともう役に立たない1冊の書物と道具だけ。
埋めるつもりなんて、さらさら無かった。
また私の弱さのせいで、身近にいる誰かが死ぬのは、もうごめんだった。
医者として人を救うはずが、己の過去の呪いで、無関係の人間を巻き込みたく無かった。
なのに、天邪鬼はもう1人来た。
『それにしても、こんなところで雨宿りとは。よほど焦っていたのですね。2人共』
女性と間違えてしまうくらいの容姿端麗な男。
しかしそれだけじゃない。
女性のような優美さとは別に、その心の奥底から、武士としてあるべき芯の強さのようなものを感じた。
何より……
((この人…何か……せんせーに似ている…))
私は直感で分かった。
この人も同じ、"与える側の人間"だと。
(……あの時、私が松陽に付いて行ったのは、きっと…かつての師の面影を、私が勝手に重ねていたからだ)
成人になった雅は、かつての幼い自分の未熟さと共に、自分を導いてくれた2人の師の存在の大きさを、ひしひしと感じていた。
そしてその2人共を、"同じ仇敵"に奪われたのだ。