第19章 友が為
「……私は、松下村塾に流れ着く前、故郷を幕府によって滅ぼされたんだ」
「!」
雅は高杉とは目を合わせず、横顔を見せたまま、自分の過去を話す。
「氏を名乗れなかったのは、生まれも過去も……"かつての私"が、もうとっくに死んでいたからだよ」
母の首は、自分達の家だった焼け跡の地面に埋めた。
ほとんど焼失していて、私達が生きていた証は見る影もなかった。
でも、荒らされた形跡はあった。
恐らく、焼く前に、役人が血眼になって探したんだ。
"華岡愁青"の手掛かりとなるもの。
"通仙散"の製造方法と、そしてその"原料"となる未知のエネルギー源を。
(探したって無駄だ。だってあそこ"には"無いから……)
あるのはもっと別のところだ。せんせーと私にしか知らない、鍵の必要な場所。
幕府だろうと奈落だろうと、天導衆だろうと、あの場所に入るどころか、見つけることだって不可能だろう。
見つけるには、"道"を辿らなければいけないからだ。
それもただの道じゃない。地中深くに根付いている龍が辿る道筋だ。
そんな危険な道に、これ以上、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
無関係な者を巻き込むわけにはいかないんだよ……
だから……
ようやく雅は高杉と目を合わせた。
「……でも…そんな生きる屍だった私に、松陽と銀時は、新しい名を与えてくれた。松下村塾の雅になれて、私は生かされたんだ。
・・・・・・・・・・・・・
アンタと出会うずっと前から」
高杉とよりも、ずっと前から繋がっていた。
ただの師弟ではなく、ただの同じ弟子同士の関係でもない。
この戦に参加したのは、そんな繋がりを護るため。
雅は自身の顔に手を当て、表情を隠すようにして、感情を吐露する。
「家族みたいだったんだ。あの2人といる時、いつもそう思っていた。今でも、大事なんだ…」
そしてその掌を下ろして、拳を握りしめる。
「なのに"奴ら"(幕府)はまた…私から大切なものを奪った。そして今でも…高みの見物を決め込んでいる……私は…それが腹立たしくてならない…ッ!」
昂る感情を抑えながらも、その声には確かな怒りが込められていた。
雅はずっと、その"私情"を抑えて、冷静な医者として振る舞ってきた。
でも、本音は違ったのだ。