第19章 友が為
「雅…?」
高杉は彼女の背中へ手を伸ばす。
ピタッ
しかし、寸前に止めた。
あの夜の出来事がフラッシュバックしたからだ。
雅の唇を奪って、自分の"欲望"(エゴ)を押し付けた。
その弱音を受け入れるように抱擁するだけのはずだったのに、自分の内から、雅を欲する欲望が渦巻いて、止められなかった。
(……ッ)
高杉は手を下ろした。
もしまたあの時みたいに、触れただけでも歯止めが効かなくなったら……
「アンタの方は大丈夫なの?」
「!」
雅は振り返り、心配そうな眼差しを向ける。
「アンタや桂は、蠱毒の感染の兆候とかは、ないよね…」
「…あ、ああ。さっきヅラとも面合わせたが、相変わらずの面してらァ」
「いやどんな面」
桂に頼まれて様子を見に来たつもりが、逆に心配された高杉であった。
高杉は雅と再び目を合わせる。
「「アンタの方は」っつーことは、銀時の方は…それほど、やべェのか?」
「……ハァ」
雅はらしくもなくため息を漏らして、その場に跪きそうなくらいに、弱々しくなる。
「実に嫌なものだよ。"姉弟"のように育った相手の腹を掻っ捌くなんて…」
「!」
姉弟、だと…?
高杉にとって、初耳だった。
「……アンタと桂には言えなかった。松陽先生を、生徒を分け隔てなく接する優しい先生にしたくて、まるで贔屓目のようだからな」
雅は何か話し始めるような雰囲気になり、高杉は耳を傾ける。
「……お前にとって銀時は、可愛い弟みてーだと?」
「まさか。あんな頭の中も外側も、どうしようもないゴチャゴチャランポランな奴。別に可愛くなんかない。私が調合した縮毛矯正剤で何度も試したが、捻じ曲がった大元をどうにかしなきゃいけないくらい重症だ」
かなりの言い草であり、高杉は思わず口元を崩す。
しかしつまり、雅は銀時の髪質を熟知しているくらい、昔からずっと……
「……なら、松陽先生は、お前にとって」
「……それは違う」
今度の雅ははっきりとした声で否定した。
「私の父親なんかじゃない。松陽は銀時の父親だ」