第19章 友が為
一方、その本人はというと、
ブン……ブンッ……ブンッ!
蜂が飛んでいるわけではない。竹刀を振り下ろしている音である。
明け方の道場で、雅は道着姿を身に包み、鍛錬に励んでいた。
側から見ればそうだが、
・・・・・・・・・・・
もっと別の理由があった。
「ハァ…ハァ……ハァッ…」
左手に竹刀を持ったまま両膝に両手をつく。
首筋から流れる汗が冷えて、寒気を覚える。
秋はもうじき終わり、冬が来る頃合いである。
ここ数日は、季節の訪れをゆっくり感じれられるほど、そんな余裕はなかった。
10年前まで、母親と一緒に出来上がった干し柿を食べていたのが、ずっと遠い昔のように思える。
もう2度と戻らない過去だ……
(だが、銀までも
・・・・・・・・・・
過去にしてたまるかッ……)
無力にも、唯一無二の友を護ることができなかった自分を戒めるように、その体に鞭打つように竹刀を何度も振り下ろす。
今更、鍛錬を怠らず続けたところで、銀時のように強くなれるわけではない。
女である自分には、どうしても体格や腕力の差で、縮められない力の差が存在する。
そのハンデをカバーするように、急所を一撃で仕留める技や、どんな敵の攻撃も避けれるよう瞬発力を高めてきた。
しかし、その付け焼き刃の戦い方が、今になって仇となり、仲間達を見殺しにして、生き残ってしまった。
(もし、銀と一緒にいたのが、私じゃなくて晋助だったら……)
グッ
竹刀を握り締め、己の体に刻まれた昔からの呪いを恨む。
何でいつも、
・・・・・・・・・
私ばかりが生き残る…?