第19章 友が為
「……これは、雅さんが言っていたことですが、あまり良いとは言えません。今は銀時さんを細胞レベルまで眠らせて、一時的に蠱毒の侵蝕を防いでいると、そう言っていました」
「……そうか」
3人の間で重々しい空気で、黒子野が再び口を開く。
「詳しくは本人に聞いた方が良いでしょうけど、でも……」
『?』
「今はそっとしておいた方が良いと思います…」
桂が何故だ?と聞くと、黒子野は神妙な面持ちで、告白する。
「雅さん。以前言ったことがあるんです。銀時さんは、"弟"みたいな存在だと」
!
桂より高杉の方がよりその言葉に反応した。
(弟、だと?アイツ。そんなこと今まで一度も……)
黒子野を凝視したまま目を見開いた。
「雅さんは皆さんの前ではあまり言いませんけど、僕にたまに打ち明けてくれていたんです」
黒子野は雅の医療事務のサポートに回ることもあり、その仕事合間にちょっとした会話を混えることもあった。
仕事もできて感情的にならないからこそ信頼できる。
だからこそ、雅は自分の少しばかりの本音を、今まで彼に話していた。
「松下村塾に入ったばかりの頃、門下生が銀時さんと自分のたった2人だけの時、銀時さんなりに雅さんのことを気にかけて、守ってくれていたらしいんです。雅さんはそれを自覚していて、表向きでは頼らなくても、心の内側では、心の支えにもなったことがあると」
黒子野は雅に打ち明けられた印象的な言葉を、高杉と桂の前で、一言一句迷いなく、自身の口で再現してみた。
『アイツのおかげで、私は松下村塾に入ることができた。あの馬鹿が私を見つけてくれたおかげで、吉田松陽の弟子になれて、皆に会えた』
その時見せてくれた表情は、間違いなく嘘偽りない純粋な笑みだった。
『そんな繋がりを結んでくれたアイツを、私は結構買っているんだ。世話の焼ける弟みたいだと言ったら、嘘じゃないかもしれないな』
厳格な雅に反して、銀時のマイペースさに振り回されながらも、それでも退屈しない時間を送れた。
雅にとって坂田銀時とは、大切な繋がりの一つであることには違いないのだ。