第19章 友が為
「アイツは俺達にとって英雄的な存在である。が、それと同時に、幕府にとっては逆。誰よりも優先的に抹殺対象にされる」
敵の戦略を減らすのであれば、"ヒーラー(回復役)をいち早く始末するのが、戦いの鉄則だ。
なのに雅は今まで、自分の命の危険を省みず、無茶な戦いをしてきた。
「何としても守らなければな。アイツが望まなくとも」
「……」
高杉は内心、心の底から安堵していた。
雅はこれから戦場に出ず、医療に徹すると確かに言ったのだ。
蠱毒という謎のウィルスを対処するために、人肌脱ぐと決心した。
銀時は深手で、しばらく戦に出れないだろうが、必ず雅が治してくれる。
拠点で陰ながら支えてくれる方が、彼女の身は安全だ。
(明らかに私情。俺個人の問題だが、アイツがこれ以上傷付かずに済むなら……)
スッ
「桂さん高杉さん。銀時さんの手術が終わりました」
『!』
黒子野が2人の前に姿を現した。
しかしその表情には陰りがあり、あまり良くないことが一目で分かった。
「手術はッ、成功したのか…!?」
高杉は食ってかかるような勢いで問うが、黒子野は調子を崩さず静かに受け応える。
「体内の蠱毒のほとんどは除去したとのことですが……意識を戻すには、1週間ほどかかると言っていました」
「!!。雅が…アイツがそう言ったのか?」
桂の戸惑いの声に、黒子野は頷いた。
そして2人を集中治療室まで案内する。
言葉だけよりも、直接見た方がより分かりやすいから。
純白のベッドの上に、銀髪のお馴染みの銀時が眠っていた。
ピッ__ピッ__ピッ__
モニターから心拍の機会音が規則的に流れる。
その命がまだ生きている証が音で示されている。
(銀時……)
麻酔を打たれているので意識は無く、綺麗な仰向けの姿勢で、口元は酸素マスクが付けられていた。
腕・胸・腹には、傷を手当てしたガーゼや、チューブが張り巡らされていた。
高杉はガラス越しで、ライバルのらしくない姿を呆然と眺めた。
その姿は想像していた以上に深刻だったから、言葉が出なかった。
「……黒子野。銀時は、今、どんな状態なのだ?」
桂は隣の高杉を気にしつつ、代わりに知りたいこと聞く。