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君想ふ夜桜《銀魂》

第19章 友が為



「……ここでは目立つ。明日の戦のための会合もする必要がある。場所を変えよう。それに__」

桂はガラス越しの見えない治療室にいる彼女を思う。

今、銀時を救うために、黒子野と共に懸命に医術に専念している。

今そんな影の努力をしている本人のそばで、こんなことを話すべきではない。


高杉もそれを察し、2人はその場を後にする。

「……逆に聞くが、お前はどうなんだ?」

今度は桂の方から聞く。

「昔から、俺よりお前の方が雅のことを気にかけていたのは事実だろう。お前にも、何か心当たりがあるのではないか?」

「……確かに、似てるとは、思ったことはあらァ」

高杉は松下村塾にいた頃から抱いていた違和感を思い起こす。

ずっと「そんなわけない」と、胸の中にしまい込んで、考えないようにしてきた。

松下村塾で各々がガキらしく好き勝手やっていた頃から数年を経て、身も心も大人らしく成長してきた。

雅もまた、松陽の面影がますます……

「だが、辻褄が合わねェ。アイツの父親は行方をくらましたはずだ」

「何?雅がそう言ったのか?」

高杉は不意に口を閉ざす。


『話す前に約束しろ。このことは他言無用だということを』


彼女の身の上話を聞ける代わりに、たとえ仲間だろうと明かしてはいけない。

雅との約束を破ってしまった。

呆然とする高杉に桂は詰め寄る。

「……高杉。話してくれ。アイツがどんな過去を持とうが、俺達の仲間であることには、変わらないだろう?」

「……」

「アイツに口止めされていたのは、お前の反応を見れば分かる。なら俺も同罪だ。俺はアイツの意に反してでも、雅のことを知りたい。松陽先生のためにもな」

「!?」

高杉の顔色が変わる。

桂にもまた、誰にも譲れない約束があった。


『あの子がこの先また、自分に刃を突き立てるようなことがあったら、助けてあげてください』


それは紛れもない。師からの大切な頼み。

そして唯一無二の友のため。己が信じる武士道のため。

「もはや他人事ではない。俺は友として、そして松陽先生からの教えを守るためにも、アイツの力になりたい。その為に、必要なことだと信じている」

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