第19章 友が為
その後、高杉と雅は無事に拠点で合流でき、雅は医者の顔になった。
雅以外にも、軍事医療に携わる志士達もいるため、簡単な応急処置はできる。
「他の者の手当てはアンタ達に任せる。手術が必要が重篤患者がいれば、私がやる」
雅は治療室にすでに運ばれている銀時の容体を診て、他の隊士達に必要な道具を持って来させるように指示を出す。
「黒子野。しばらく付き合ってくれ。アンタの冷静なサポートが必要だ」
青い手術着に着替えながら、己の強い覚悟と信頼の眼差しを仲間に向ける。
手術室に入る直前、桂に呼び止められて、不安そうな眼差しを向けられて、「何かお前のために出来ることはないか?」と聞かれる。
「…‥リーダーは、他の隊士達の士気を保つよう配慮するのが使命だ。私は私の使命を果たす。アンタ達は次の戦いのためにできることをやって欲しい」
「……」
桂は苦い顔で俯き、銀時をこれから手術する雅の方が、よっぽど冷静でいた。
桂の隣には高杉もいて、同じく雅のことを心配していた。
長年背中を追い続けているライバルも気がかりなのは当然だが、同じく、いや、違う意味で気がかりなのだ。
(雅……)
さっきまで、背中にいた彼女はまるで……
「詳しい話は後でする。あ、それと晋助」
「!」
高杉は反射的に顔を上げると、そこにいたのは雅、のはずだった。
(!)
一瞬、違う人間に見えた。
それくらい雅の表情が、穏やかで優しいものだった。
「…‥色々と、ありがとう」
雅は高杉の返事も聞かずそれだけ言い残し、手術室の開閉扉をくぐった。
2人は残されて、しばらくすると桂の方から口を開く。
「手術前というのに、緊張や不安を口にするどころか、あんな顔するとはな……」
桂も内心びっくりするほど、雅の笑顔が目に焼きついた。
鮮明に。まるでそれは……
「坂本の言うことも分かるな…」
「……てめェもまさか、あの辰馬鹿の言うことを間に受ける口か?」
高杉は桂に不服そうに唱える。
「そんなに似て見えるか?アイツと、松陽先生が」