第19章 友が為
朝方。
鉛色の曇天の下で、攘夷志士達が集う本拠地の寺内では、重々しい空気が漂っていた。
志士の大半は、目立つところに刀傷を作っており、その上には包帯が痛々しく巻かれている。
その奥には集中治療室があり、"蠱毒"を患った者やもしくは疑いがある者達が隔離されていた。
その中で、銀時は眠っていた。
(銀時……)
高杉は病室のガラス越しに、ライバルの痛ましい姿を無力に眺めていた。
「……」
あれからもう3日は経った。
銀時は未だに目を覚ます様子はねェ。
雅もずっと前から、特効薬とやらを作り出すために、毎日研究を続けてやらァ。
揃いも揃って部屋にずっと篭りきり。しばらく顔すら合わせられやしねェ。
高杉にとって2人は友でもあり、
・・・・・・・
それ以上の存在だ。
それを同時に2つ失いそうになったと考えるだけでも……
(雅の奴……)
『私が必ず何とかする。だから、信じて待っていて』
あの笑顔にあの言葉。あれァ、まるで……
高杉の脳裏には、忘れたくても忘れられない記憶が過ぎった。
業火の中、陽の光が黒い烏によって闇夜へ誘われていく。
何よりも大切だった先生が、幕府の目論見によって拘束され、連れていかれる時のこと。
松陽はあの時でさえ笑顔を絶やさずに、弟子である自分達のために、己の身を幕府に差し出した。
『何。心配いらないよ。私はきっとすぐに戻りますから』
松陽のあの笑顔にあの言葉が、雅と
・・・・・・・・・・
重なって見えてしまう。
正直、以前から、薄々思ってはいた。
成長に伴い、雅の容姿は子供から大人へと変わっていった。
松陽の身なりや年に近付けば近付くほど、ますます……
「……いや、そんなわけねェよな」
「ん?何の話じゃ?」
!!?
高杉はギョッとして、戦場での構えの態勢を思わず取る。
すぐそばには、じゃじゃ馬娘ならぬじゃじゃ馬男の坂本辰馬がいつの間にか立っていた。
「おまッ…!いつからいやがった…?」
「このページの10行目くらいぜよ。おまんがどうやら悩んでいるようじゃから、何とか話を聞いてやれと、夢主に頼まれたんじゃ」
まさかの"夢主"(私)からの、直々の指名である。