第5章 人は皆 十人十色
「今日の仕事は終わったから、別に少しここにいても構わないが、そういうアンタは広間に戻らないの?」
「アイツらとはいつもいる。てめーと2人ってのもそうないしな」
前もあったけどな
高杉は雅にフッと微笑んだ。
「それに俺ァ、またてめーの人生相談に付き合っても構わねェぜ」
「……アンタ。私の話なんか聞いて楽しいの?」
楽しい…何だろうな。ただ、前もそうだが
てめーの話聞いてると、
不思議と退屈しねェだけだ
いつものメンツと飲んでもつまらねェこともあるが、コイツは違う
「そうじゃなかったら、俺からずっとここにいたりしねェよ」
「……」
彼女はかつて松下村塾で、高杉とは他とないある関わりがあった
その後を大きく変えた出来事…
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回想
〈松下村塾〉
「じゃあ、何で泣いてたんだよ?!」
ヒゥゥ~
風が2人の間の無音を強調した。
「……私がどうしようと…アンタに関係ない」
目を反らして、無関係だと言い張った。
(は?またそれか?他人のことは眼中にねェってか)
「ッ…!俺ァな、てめーのあんなツラ思い出す度 調子が狂うんだよ」
高杉は声を張り上げた。
自分から逃げてるくせに。いつも退屈そうな顔してるのに何だってんだ
「てめーの事情なんぞ、俺には分からねェし知ったことか」
「……」
声を荒げてるのに対し、雅は反論することなく人形のようにじっとしていた。
その他人事のような態度に、さらにイラついた。
高杉は思ってることを今、全てぶつけた。
「だが、お前は
・・・・・・・・・・・
そんなたまじゃねーだろ」
周りから“完璧”と呼ばれ、確かに俺も認めざるを得なかった
なのにそいつァ、本当は何の理由もなしに泣くただの泣き虫だと?
てめーはそんな奴だったのか?
あの時、試合したときも…俺は気付いた
こいつは本気じゃなかった
手加減されたこともコイツが泣きながら独りでいることも、俺には胸くそ悪ィんだ
「あんな見たくねェツラ見せられて、こっちが迷惑なんだ。てめーのせいだぞ」
「なら、どうすればいい…?」
雅は思った。高杉が自分のせいで不快な思いをしたなら、どうすれば気が済むかと
高杉は考えることなくたった1つ要求した
「俺ともう一度勝負しろ」