第5章 人は皆 十人十色
「今日、晋助が来てくれなかったらもっと苦戦して、仲間も守れなかったかもしれない。アンタのおかげで、私もけが人も無事だった」
雅の右腕には、かなり厚く包帯が巻かれてた。
「あんときの傷、深かっただろう」
「……いや、右腕だったからまだ良かった。
・・・・
私の場合、左腕やられたらおしまいだから」
あぁ、そうだったな。雅は左利きか
「右腕は使えねェってことか?」
「いや、使えなくはない。ただやはり、左の方がしっくりくるだけ」
「……そうか」
テーピングが終わり、高杉は着物の裾を戻した。
「鬼兵隊があんな場所に来るとは思わなかった。その足もそこで無茶したんじゃないの?」
何で晋助があの場所に…
「そういうわけじゃねェ。こっちが思ったより早く片付いたんだ」
雅は棚に道具を片付けた。
「それに、てめーが心配だったからな」
ピクッ
心配?
「アンタは、私よりもっと気にかけるべきものがあるでしょ?」
「まあそうだが、仲間の心配すんのは普通だろ」
銀やヅラには普通しないのに、私に限って…
「それは、私が力不足ってこと?」
「違う。「てめーが足手まとい」とか、そんなんじゃねー」
“心配せずただ信じる”
それも仲間に対しての一つの礼儀でもあらァ
コイツの強さは、俺だってよく知ってる
「それに俺は、お前がそういうのを一番嫌うのも知ってる」
「……ならいいが」
雅は机の上に置いてた煙管を、またたしなみ始めた。
「ケガの具合を見たところ、まだ何日かテーピングが必要だから。その時は声掛けて」
「悪ィな」
そろそろ戻るかと思ったが、珍しくこうして2人になったから、あと一言二言しゃべっておきたい。
体勢を立て膝に変え、何を話すかと考えた。
「そういや、辰馬から飲みに誘われたのか?」
アイツ、さっきそんなこと言ってたな
「でも断った。大勢の前は得意じゃないから…」
煙管を片手に持ったまま下に俯き、落ち込んだような感じになった。
「……」
馴れ馴れしくされたくないってわけじゃねーのか
でもまぁ、独りが好きなのは相変わらずだな