第19章 友が為
「総督!誰かがこちらに向かってきます!」
鬼兵隊の部下の1人が双眼鏡で人影を確認し、そのかけ声で周り全員が戦闘モードに入った。
「敵か?何人いる?」
桂が聞いた。
「1人です。赤い服を着ています。肩に白い大きな荷物を背負っていますね。まだ遠くでよく分かりませんが」
高杉は替わって双眼鏡を覗いた。
(天人じゃねーな。なら幕府軍の奴か?)
だが赤い服?そんな奴敵にいたか…?
「!」
段々こちらに近付くにつれて、見えてきた。
背負っている者は白い荷物なんかじゃない。見覚えのある白い馬鹿。
(銀時…!!?)
そして背負っている奴は、男の割には華奢で小さい。赤いのは血のせい。
青い陣羽織を着ている、雅だ。
その背後には、物凄い数の軍勢が。
(雅ッ…?!)
桂に双眼鏡を強引に押し付けた。
「お、おいッ高杉!」
「ヅラ。守備は任せた」
高杉は鬼兵隊で動ける手練れ十数人ほど引きつれる。
「待てッ!無闇にあの敵の軍勢に飛び掛かれば、こちらの首を閉める恐れも___」
「仲間のピンチに駆けつけねえ理由なんざあんのか…!?」
そう強く言い残して、高杉は戦場へ駆け上がる。
「高杉ッ!!」
もはや桂の忠告など耳に入ってはいない。
こうして急いで向かっている中、雅の背後には天人が襲っていた。
(雅…!)
雅は右肩に銀時を背負っているにも関わらず、後ろからの天人の攻撃を避け、左手の刀で応戦する。
相手の武器に己の白刃を滑らせ、死角に入りそこから首や目などの急所を狙う。
医者である彼女は人の命を救う方法を知っている。
どこをどうすれば死なずに済むか、幼い頃からその術を叩き込まれた。
しかし逆に言えば、命を奪う方法も知っている。
どこを狙えば、一秒でも早く死に至らしめることができるのかが、よく分かっている。
実に皮肉な話である。医者であるが故、死なせる方法を誰よりも知っているのだから。
雅は体勢を変えて、なるべく敵を左側にこさせるように戦った。
右肩に担いでいる銀時を護るために。