第19章 友が為
奴の底知れねェ医者の腕を、周りの野郎は神なんて呼んでいる。
アイツは人を救うために人ならざる者になるつもりなのか。
もしそうなら、アイツが遠い存在になっていきそうだ。
(とにかくアイツは、誰にも懐こうとはしねェ、無愛想な女ってことは確かだ……)
あの松陽先生にでさえ、全く懐いている様子じゃなかった。
アイツが懐いているのァ…
・・・・
(かつての師匠か)
高杉は懐にある写真を取り出した。
かつて松下村塾の前で撮った集合写真。松陽が写っているので、とても大事なものだ。
(……今のアイツを作り出したのがソイツだったら、俺は…)
「おッ!写真か!見せて見せて」
坂本が半ば強引に高杉の隣に来て、写真を覗き込んだ。
「おぉー皆小さいのう。おまんこの時はヅラや銀時とは大差無かったのか。随分差を付けられたもんじゃな」
「黙れ殺すぞ」
坂本は写真に写っている小さな少女を指さした。
「これが雅か!相変わらず写真映えしない面じゃのう。現代っ子はSNOWを使うくらいっちゅーのに」
高杉や桂のような笑みを全く見せず、後ろの方にいた。
撮影会にしぶしぶ参加した、みたいなのりの悪さが、にじみ出ていた。
坂本は小さい頃の雅を見て、昔は髪が長かったんだなと言ってワイワイした。
そして急に顔をしかめた。
「何だ?」
「……この真ん中に写っている大人が、ヅラやおまんがよく言う吉田松陽なんじゃろ?」
そうだよ。それがどうしたってんだ?と高杉が聞くと、坂本は首を傾げる。
「なんか少し雅に似てるのう」
「!」
高杉も顔をしかめた。
「ワシは直接会ったことないから気のせいかもしれんが、アイツがこの写真の時みたいに髪伸ばしてみたら多分…」
「いや気のせいだろ。似た顔なんざ世にごまんといる」
高杉は言葉を遮り、写真を懐にしまい込んだ。