第19章 友が為
つまり蠱毒は、人工的に作られた殺人ウィルス。
その正体が知られないよう、対象者を殺した後に自然消滅するよう作られた殺人兵器だ。
蠱毒から解放される方法は今のところ一つ。死ぬことだ。
「死体になれば蠱毒は消える。私もそうしたまでだ」
「なら、何故貴様は生きている?」
敵の一番の疑問はそこだ。
「私は人一倍毒に強い体質でな。仮死剤を打って死んだ状態になっても、息を吹き返せる」
もっとも、こんな芸当は私にしかできない。普通の奴に打てば楽に即死する。安楽死剤だ。
・・・・ ・・
私に打つからこそ、仮死剤なんだが。
(バカな!ではこやつ、体を仮死状態にして、体内の蠱毒を自然消滅させたのか?!)
そんなこと、タダの人間ができるわけがない。
敵はもう立てない。雅はゆっくりと敵のそばに来て、刀を突き立てる。
「この手で護れるものがある限り、私は何度でも蘇って、死神になる」
とどめを刺した。
(銀時は……)
奥の方から斬撃が聞こえる。暗くてよく見えない。
「雅さーん!!」
下の方から援軍の声が上がる。
「アンタら。どうやって…」
「非常階段から登ってきたんです。ご無事で良かったです」
「私のことはいい。銀時が奥の方にいる。私が様子を見に行くからアンタらは…」
待機していてくれ、と言いかけたが、何か臭ってハッとした。
油臭い。臭いがする方へゆっくり目を向ける。
ポタッ…ポタッ……
壊れた鉄パイプのようなものから、油が溢れていた。
ここは古びた戦艦の内部だ。破損している箇所はいくつもある。
劣化に連れて、ガソリンが漏れてもおかしくない。
そしてその引き金となったのは恐らく、さっきまでの戦いの衝撃だ。
そして鉄や色んな化学物質が腐敗したこんな場所で、いつ引火してもおかしくない。
敵がここに引きつけてきた理由が、ようやく分かった。
「てった…」
大きな音と同時に熱い衝撃を受けて、体が吹き飛ばされた。